やる気レポート

【連載】子どもの「自己効力感」の育み方【元塾講師の心理学者が解説】|子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる――悩める子ども応援団のみなさまへ(2)

2019.03.8

【今回のポイント】
・その子にとっての“成功経験”を演出しよう。
・トータルの結果や×(バツ)しか見ない、そんなワナから子どもを救い出そう。
・子どもの隠れた成功を発見、一緒に喜び、「君はできる」と説得しよう。

子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる
悩める子ども応援団のみなさまへ

#1 子どもをやる気にさせる! バンデューラの「結果期待」と「効力期待」

#2 子どもの「自己効力感(効力期待)」の育み方。元塾講師の心理学者が解説

#3 中学生を勉強へのやる気にさせる「マスタリー目標」。高校受験でも目標を見失わないために、望ましい“できる”の種類

【教育】【中学生】【高校生】【保護者】



自己効力感(自分ならできるという気持ち)を育てる!

 

前回の「結果期待」に引き続き、「効力期待」(成功するまで自分は○○を頑張れるという子どもの自信)を応援してあげる方法についてお話ししたいと思います。バンデューラは、この効力期待のことを特に重視し、「自己効力感」(セルフ・エフィカシー)と呼び、以下4つの情報を有効活用することで、それを高められることを明らかにしています。

 
 

①成功経験:子ども自身が経験した成功

②代理経験:他の人が成功している様子の観察

③説得:先生やコーチ、親御さん等、他者からの「君ならできる」との説得

情緒的調整:努力や挑戦時に生じがちな不安感やストレスの適切な処理

 

 つまり、成功させ(①)、他の人の成功を見せ(②)、励まして(③)、安心させる(④)。これが子どもの自己効力感をはぐくむ基本的ポイントになるのです。おそらく、子ども応援団のみなさまなら、普段から心がけていらっしゃることではないでしょうか。そう、たいてい基本は単純なものです。

 

 そのため今回は、この基本をどう実践するかについて、特に、勉強の応援に重要な「①成功経験」と「③説得」に焦点を絞った上で、できる限り具体的にお話ししようと思います。

 
 
 

成功経験:成功こそ自信の最高の栄養素

 
 

「できた」という気持ちを子ども自身が経験すること。これこそ、できるという自信、すなわち「自己効力感(効力期待)」をつかむための最高の栄養素です。一回「できた」から「次もきっとできる!」と自信を持つということです。

 

それが分かっているからこそ、我々は「たのむ! 成功してくれ!」と拝むような気持で子どもの成功を待ち焦がれますよね。

 

では、子どもが自ら成功するのを、大人はただ見守って待つことしかできないのでしょうか。

 

そんなことはありません! 実は、特に勉強では、大人の働きかけによって子どもの成功を演出したり、“隠れた成功”を発見して説得したりすることで、子どもの成功経験を引き寄せ、効果を何倍にも増幅して、自己効力感に変えられる可能性があるのです。

 
 
 

子どもの成功を発見してあげる-せっかくの成功を隠してしまう“2つのワナ”

 

子どもが自分でも気づかない“隠れた成功”を大人の側で発見してあげられると、「君ならできるよ」との説得の効果が高まり、自己効力感につながりやすくなります。

 

というのは、実はびっくりするくらい、子どもは自分の成功に気づかないことが多いのです。なぜなら、そこには以下のような2つのワナが待ち構えているからです。例えば、典型的な例として定期試験や模擬試験の結果が返ってきた時を考えてみましょう。

 

第一のワナ:トータルの結果(点数や偏差値)しか見ない。

 

試験などが返却された時、トータルの結果、すなわち、志望校合格判定(模試の「A判定」とか「合格可能性60%」等)、偏差値、点数といった“目立つ”部分にのみ目がいく子どもがいます。

 

えてしてそういう時ほど、結果をつぶさに見ていくと、けっして悪いところばかりでもないのです。いままで分からなかったところが分かるようになっていたり、一部の応用問題が解けていたり――といった、成長を見せてくれることは少なくありません。しかし、そういうポイントに気づくことができなければ「やっぱり、だめだった」とつぶやいて細部に目を向けず、自己効力感を下げたまま放っておいてしまうでしょう。こういう場合は、けっこう多いものです。このように、トータルの結果しか見ず自己効力感が低下してしまうこと、これが第一のワナです。

 

第二のワナ:×(バツ)しか見ない。

 

良くない結果だったとき、われわれ大人はつい「次は出来るよう、ちゃんと復習しなさい」と指導してしまいがちです。しかし、ここに2つ目のワナが隠れています。

 

大人から「ちゃんと復習しなさい」と言われた子どもは、〇か×か、どちらに注目すると思いますか? きっと、まじめな子ほど×に注目するでしょう。しぶしぶ答案を出して正解を確認して、×のところに正しい答えを、せっせと赤鉛筆で書き込みだすことと思います。

 

さて、ではこの作業は、子どもの自己効力感という観点から考えたら、どんな影響を及ぼすでしょうか? 「よし、このテストを復習すれば、次はきっといい点が取れるぞ!」と思い自己効力感が上昇しますか?

 

イヤ、それはあまりありません。ほとんどの場合、「また、ここを間違ったのか。だめだなあ」「こんなつまらないミスをするなんて」等と考えて、自己効力感が低下するでしょう。

 

つまり、×しか見ない単なる正解への修正作業は、子どもの自己効力感を犠牲にして勉強不足につらい教訓を与える、ただの“罰ゲーム”になってしまう危険性があるのです。このように、×にのみ注目して自己効力感を失ってしまうこと、これが第二のワナです。

 
 
 

子どもの目を“隠れた成功”に向け、ワナから救い出そう!

 

子どもがこの2つのワナに陥らないために、われわれ大人には何ができるでしょう?

 

私がオススメしたいのは、時間のある時に、子どもといっしょに答案をよく見てみることです。もしかしたらはじめは嫌がられるかもしれませんが(私の経験上は、ほぼ確実に嫌がられます!)、そこでめげてはいけません。〇を確認して、子どもが自分で目を向けていない成功を発見し、ちょっと大げさなくらい一緒に喜び続けてあげましょう。「この式の展開は難しかったでしょう、よくできたね!」とか、「係り結びは、前まちがったのに、今回は正解じゃん!」とか、「一所懸命覚えていた、重箱読み、ばっちりだったね!!」等といった具合です。

 

一方、子どもの勉強がすでにかなり進んでいるために「もう難しくてついていけない」という方もいるかもしれません。もしそうであれば、子ども本人に「正解できていちばんうれしかった問題はどれ?」「どうしてうれしかったの?」と尋ねてみてもいいかもしれません。×に目を向けるのはその後でも十分です。

 

さらに、じつは×を見つめる時にこそ、子どもを励ますための大きなチャンスが眠っています。なぜなら、×になっている問題の中にも、どこかしら惜しいところが見つかることが多いからです。

 

その答えの「惜しさ」を、できれば、しっかり発見・分析してあげ、ぜひ“隠れた成功”を発掘してあげたいものです。

 

もし見つかったら、やはり、子どもと一緒に喜んで励ましてあげましょう。「あっ、ここは間違っちゃったけど、よく見てごらん。三角州と扇状地をごっちゃにしちゃっただけだよね」とか、「ンンッ、おしーなあ。この負の項を移行したときに、不等号を逆にするの忘れなければ、ばっちり正解だったよね」等といった具合です。

 

「結果的には×になってしまったが、ここまではできていた」「だから、ここをやりさえすれば正解できるんだ、大丈夫」と、具体的に正解への道筋を示しながら、自己効力感を高めるメッセージを送るとより効果的です。

 

以上、なかなか難しいと思いますが、機会があったら、挑戦なさってみて下さい。そうして、子どもからみて、われわれ大人が、「間違いを指摘して罰ゲームを与える人」から、「一緒に成功を探し、喜び、励ましてくれる人」に変われたら最高ですね。



子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる
悩める子ども応援団のみなさまへ

#1 子どもをやる気にさせる! バンデューラの「結果期待」と「効力期待」

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この記事を書いた人

鈴木 高志

高知工科大学 准教授。1996年、東京大学文学部卒業。関東圏大手進学塾で中学・高校受験指導に携わる中で、学習における動機づけ(やる気)の大切さを痛感。そこを原点に、筑波大学大学院・人間総合科学研究科にて動機づけの研究を始める。2014年、高知工科大学准教授に就任、現職。教員を志望する学生たちとともに、子どもと子どもを応援する大人の方々を笑顔にする方法を考え続けている。

 
 
 

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