やる気レポート

【連載】子どもを「やる気」にさせる、バンデューラの「結果期待」と「効力期待」(前編)|子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる――悩める子ども応援団のみなさまへ(1)

2019.02.8

【教育】【中学生】【高校生】【保護者】
・「結果期待」を持てる条件を整えよう。
・成功に結びつく合理的な学習内容や練習メニューを用意しよう。
・ていねいに説明して「これをやったら成功できる!」と納得してもらおう。

保護者として、あるいは教師として、子どもにしっかり勉強をして欲しいと願っていながら、なかなか子どもがやる気を出してくれない……そんな悩みをかかえることは、おそらく少なくないでしょう。
今回の連載では、塾講師としての豊富なキャリアを持ち、現在は高知工科大学で教育心理学の教育・研究に携わる鈴木高志先生に、やる気のメカニズムをふまえた子どもへのアドバイスやサポートの方法をうかがいました。
子どもが「やってみよう!」「できた!」と思えるようになるヒントを紹介していきます。

 

【連載】子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる――悩める子ども応援団のみなさまへ
第1回 子どもを「やる気」にさせる、バンデューラの「結果期待」と「効力期待」(前編)
第2回 子どもを「やる気」にさせる、バンデューラの「結果期待」と「効力期待」(後編)
第3回 勉強において目指すべき目標とは――望ましい「できる」の種類
第4回 (後日掲載予定)
第5回 (後日掲載予定)
第6回 (後日掲載予定)



1.本当の自信のため必要な2つの要素――バンデューラの「結果期待」と「効力期待」とは

 「頑張って!」と、子どもを応援中の方なら誰でも、「子どもに自信を持たせたい」と願う反面、なかなか思い通りにならず悩まれると思います。
 今回は、そんな“悩める子ども応援団”の皆さまが、よりよく子どもの自信を引き出すために便利な考え方、バンデューラの提唱する「自信」の2つの要素――「結果期待」と「効力期待」――についてお話したいと思います(バンデューラ, 1997)。
 「結果期待」とは、「この頑張りはきっと成功に結びつく」という、結果に対する期待です。
 一方、「効力期待」とは、「自分ならその頑張りをやりとげられる」という、自分に対する期待のことです(ふつうこちらを指して「自己効力感」と呼びます)。

 英単語の覚え方を例にお話しさせてください。私の塾講師時代、中学1年生の春は生徒さんがよく英単語の覚え方で悩む時期でした。担当するA君から「お父さんは、『英単語なんて30回書けば、だいたい覚えられる』って言うけど、本当?」と聞かれ返答に困ったことがあります。なぜ困ったかというと、答えが、客観的にはYESなんですが、A君の気持ちを考えるとNOだったからです。
 この時、A君が「確かに、そんなつらい作業を頑張れば、きっと英単語を覚えられる!」と思えれば、それが「結果期待」のある状態です。私がYESと答えることで、A君の結果期待を補強してあげることはできるでしょう。
 でも、A君が実際に頑張るには、結果期待だけでは不十分です。なぜなら、たとえその頑張りが成功に結びつくとしても、A君がそのつらさに耐えられると思えるかは別の話だからです。A君が「えー、そんな30回も書くなんて、無理!」と思うなら、お父さんのアドバイスはA君の行動に結びつきません。逆に、A君が「大丈夫、僕なら頑張って30回書けるぞ」と思えれば、行動に結びつくでしょう。このように、「自分なら、成功するまで頑張れる」と思える状態、それが「効力期待」のある状態です。
 A君の場合、彼が私に聞いてきた時点で、「そんなこと無理、やりたくない」という気持ちがヒシヒシと伝わってきていました。つまり、A君には効力期待がなかったのです。

 バンデューラによれば、「この頑張りはきっと成功に結びつくし(結果期待あり)、自分ならそれを成功するまで頑張れる(効力期待あり)」というように、「結果期待」と「効力期待」の両方がそろうと、実際の頑張りに結びつく、“本当の自信”を持つ可能性が上がります。逆に言えば、この2つがそろわないと、図のような形で自信をもって頑張ることが困難になります。

「結果期待」なし&「効力期待」あり―②不満・反発 
 自分は頑張れるのに(効力期待あり)、何を頑張っていいか分からない、または頑張っていても成功に結びつくかは分からない(結果期待なし)という状態です。この場合、うまくいかないのは環境や指導する大人(先生、親御さん、コーチ)のせいと考えて、不満や不信感をもったりしがちになります。

「結果期待」あり&「効力期待」なし―③劣等感・自責 
 何を頑張るべきかは分かるが、自分はそんなに頑張れないという状態です。この場合は「できないのは自分のせいだ」と考え、劣等感に陥ったり、自責の念を持ったりしがちになります。先の例で、もし私がYESと答えて結果期待を補強すると、A君はこの状態になる可能性が高くなるといえるでしょう。

「結果期待」なし&「効力期待」なし―④無気力
 成功のため何を頑張ればいいか分からないし、仮に分かっても頑張れる気がしないという状態です。この場合はもっとも重症で、大きく自信を失って、無気力の状態にあります。

 

2.子どもを応援するなら、まずお勧めは「結果期待」を整えて、ていねいに説明すること。

 さて、では我々大人はどうしたらよいのでしょう。2つの手順で説明させてください。
 第一にお勧めしたいのは、子どもが「結果期待」を持てる客観的状況を整えることです。
 具体的には、結果につながる合理的な学習スケジュールや練習メニューを作成すること等がこれにあたります。ふつう大人には、子どもより豊富な知識や経験があります。また、専門家(先生、塾講師、コーチ)に頼ったり専門書やHPをひも解いたりして、指導法や理論などの知識を補うこともできます。このように、まずは客観的に「この頑張りは成功に結びつく」というような、「結果期待」を持てる状況を整えることが重要です。
 第二に、子どもにていねいに説明して納得させることです。
 忘れがちになりますが、自信を持つ主体はあくまで子ども本人なので、せっかく「結果期待」を持てる客観的環境を整えても、子どもが「なるほど」と思わなくては、“その子の”結果期待にはなりません。なぜそのスケジュールやメニューが結果に結びつくのか、ぜひ、ていねいに説明して子どもを納得させてあげましょう。
 そのためにとても良い方法の一つが、はじめから子どもと一緒に、スケジュールやメニューを作成することです。そうすればあとになって説明する手間が省けますし、その子自身がやりたいことや向いていることなどをあらかじめ織り込むこともできます。先のA君の例でも、お父さんが、慣れない英単語の取得に取り組むA君とよく話し合いながら、「じゃあ、こうしようか」と決めるのが理想的だと思います。



3.注意! やってはいけないこと。――せっかくの励ましが空回りしないために

 逆にやってはいけないのが、スケジュールやメニューといった「結果期待」をもてる客観的環境を整えずに、やみくもに激励することです。子どもの側に「この頑張りなら成功に結びつく」という自信がない中でいくら励ましても、子どもの中では「励ましてくれているから、とりあえず頑張ったらいいのは分かるんだけど、この勉強で本当に大丈夫なのかなあ?」という気持ちが先行し、励ましが空回りしてしまいます。悪くすると、大人に不信感を持って反発したり、「もうどうしようもないや」と無気力になってしまったりするかもしれません。仮に、子どもが大人に極端に従順な性格であったがために、大人のアドバイスを受け入れて頑張れたとしても、それでは「大人の命令を聞けば成功する」と考える子どもを育てていることになってしまいます。これでは本当の自信は育まれませんよね。
 忙しいと、ついつい説明を省きがちになりますが、「どう頑張れば成功できるのか」「何をすれば結果を出せるのか」という「結果期待」の説明と納得は、子どもの「効力期待」と並んで、「本当の自信」を支える基本的な土壌となります。気をつけたいものですね。

 最後までお読みいただきありがとうございます。次回は、今日の「結果期待」のお話を踏まえて、子どもの「効力期待(自己効力感)」をさらに高めるにはどうしたらよいか、というお話をご紹介したいと思います。
 ではまた、一緒に子どもを応援していきましょう。

 
 

【連載】子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる――悩める子ども応援団のみなさまへ
第1回 子どもを「やる気」にさせる、バンデューラの「結果期待」と「効力期待」(前編)
第2回 子どもを「やる気」にさせる、バンデューラの「結果期待」と「効力期待」(後編)
第3回 勉強において目指すべき目標とは――望ましい「できる」の種類
第4回 (後日掲載予定)
第5回 (後日掲載予定)
第6回 (後日掲載予定)



この記事を書いた人

鈴木 高志

高知工科大学 准教授。1996年、東京大学文学部卒業。関東圏大手進学塾で中学・高校受験指導に携わる中で、学習における動機づけ(やる気)の大切さを痛感。そこを原点に、筑波大学大学院・人間総合科学研究科にて動機づけの研究を始める。2014年、高知工科大学准教授に就任、現職。教員を志望する学生たちとともに、子どもと子どもを応援する大人の方々を笑顔にする方法を考え続けている。

 
 

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