子育て・教育

小中学生の勉強へのやる気を引き出すコツ。「学び」を「あそび」に変えよう!

2020.08.21

【今回のポイント】
・ お子さまの「感情的エンゲージメント」をはぐくもう
・ 日常のありふれたことをヒントに「勉強」を「あそび」に変えよう
・ 大人も一緒に“勝ち”を目指して楽しもう

【教育】【中学生】【高校生】【保護者】

保護者として、あるいは教師として、子どもにしっかり勉強をして欲しいと願っていながら、なかなか子どもがやる気を出してくれない……そんな悩みをかかえることは、おそらく少なくないでしょう。
今回の連載では、塾講師としての豊富なキャリアを持ち、現在は高知工科大学で教育心理学の教育・研究に携わる鈴木高志先生に、やる気のメカニズムをふまえた子どもへのアドバイスやサポートの方法をうかがいました。
子どもが「やってみよう!」「できた!」と思えるようになるヒントを紹介していきます。

 

子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる
悩める子ども応援団のみなさまへ

#1 子どもをやる気にさせる! バンデューラの「結果期待」と「効力期待」

#2 子どもの「自己効力感(効力期待)」の育み方。元塾講師の心理学者が解説

#3 中学生を勉強へのやる気にさせる「マスタリー目標」。高校受験でも目標を見失わないために、望ましい“できる”の種類

#4 小中学生の勉強へのやる気を引き出すコツ。「学び」を「あそび」に変えよう!

 
 
 

理想的な子どもの姿とは


 

鈴木高志です。昨年大病をいたしまして、一年ぶりの復帰・再開となります 。今回は、小学生や中学生のお子さまをもつ保護者のみなさまに向けて、勉強を“あそび”のように楽しんで、前向きに取り組んでもらうためのポイントについてお話しできればと思います。

 

まずは改めて、われわれ「子ども応援団」が目指す、理想的な子どもの姿について確認するところから始めさせてください。

  

「やる気に満ちた子ども」「頑張っている子ども」と言えば、どんな子どもの姿を皆さんは想像するでしょうか? きっと、子どもが勉強、スポーツ、あるいは音楽などを、一心に頑張っている姿を思い浮かべるのではないでしょうか。

  

そこでもう一つだけ、さらに考えて頂きたいのです。その子どもの背後に、「大人」、たとえば先生や皆さん(親御さん)がいたとして、その大人の方は、どこにいますか?、何をしていますか? どんな表情をしていますか? なるべく具体的にイメージしてみて下さい。

  

子ども自身の頑張りを、少し微笑んだ表情で、そっと離れて見守っている。きっと、そんな大人の姿が思い浮かぶのではないでしょうか。そうなんです、理想的なやる気の状態の条件として多くの人が考えるのが、強制されなくても、ご褒美でつられていなくても、子どもが自らの意思で何かを頑張っている状態なのです。

  

動機づけの研究では、このような状態をもたらすやる気を、「自律的動機づけ(Autonomous motivation)」と一般的に呼ぶことがあります。そして、これはさらに、①「内発的動機づけ(内的調整)」と、自律的な外発的動機づけとよばれる②「統合的・同一化的動機づけ(統合的・同一化的調整)」等に分けることができます。

 

今日は、理想のやる気の第一弾として、①「内発的動機づけ(内的調整)」を中心に紹介することにしたいと思います。

 
 
 

「内発的動機づけ」とは  -小さな子の“あそび”ように一心に楽しく


 

内発的動機づけとは、「やってること自体が面白いからやる」という動機づけといえます。典型的には、子どもが「あそび」で何かを一心にしている時がこれにあたります。

 

小さな子どもが、砂場で泥をこねている時、積み木を積んでいる時、おままごとをしている時、その子は「これをすればホメられるぞ」とか、「これは~の役に立つわ」とか、そういうことはまず考えていませんよね。ただあそび自体が楽しくて、一心に遊んでいるのです。

 

このように、内発的動機づけは、やっていて楽しい、ストレスがないという点から、特に理想的な動機づけと言えます。だから、“あそび”として勉強が出来たら、それは理想的です。「へーおもしろいなあ」とか、「すごいなー」「かわいいなあー」「きれいだなあー」とか。我々大人だって、そんな風に仕事できたらなあ、と思うわけです。

 

【関連記事】内発的動機づけについての解説はこちら(香川大学・岡田涼先生)

 
 
 

「内発的動機づけ」のための2つの材料


 

長年子どもの動機づけを研究されている櫻井茂男先生は、このような興味や楽しさといった、ポジティブな感情を伴って何かに取り組んでいる状態のことを「感情的エンゲージメント」と呼んでいます。

  

  

そして、この感情的エンゲージメントをはぐくむには、「へー、おもしろいな」といった知的好奇心や、「私ってできるじゃん」といった有能さへの欲求を充足することが有効と指摘しています。つまり、知的好奇心と有能さを組み合わせれば、たちどころに勉強を「あそび」に変え、「内発的動機づけ」が急上昇。

 

つまり、子どもが自分から机に向かったり、新しいことにイキイキとチャレンジしたりといった前向きな姿勢が身についていくのです……と、まあ、そんな簡単にはいかないかもしれませんが、そんな工夫や演出が、ちょっとでも出来そうなら、やってみてソンはないですよね。

 
 
 

「内発的動機づけに」挑戦 -勉強をあそぼう!


 

そんな“あそび”への挑戦の例として、私がよく親御さんにご紹介申し上げてきたものの中に、「車のナンバーで遊ぶ」というのがあります。皆さんもやったことがあるんじゃないでしょうか? いろいろ遊べるので私は大好きなんです。今日は、教科と絡めて活用例を2つくらい紹介させてください。

 

一つ目が社会科。ナンバー上部には、「横浜」「高知」「つくば」など管轄運輸支局や自動車検査事務所の所在地名が書いてありますよね。この地名を使って、たとえば「いちばん遠いナンバーを探そう!」ゲームができます。

 

全国地図帳を車やカバンに携帯しておいて、地図上で位置を探し当てるところも合わせてやると、効果倍増です。なにも“ゲーム会場”を求めて遠出する必要はありません。地元の観光地や高速のインターチェンジ出口付近で十分楽しめます。

 

車中ならスマホの地図アプリを見ながらでもできますね!

   

“キャラ”としては特に長距離トラックがねらい目。家族みんなで「こんなに遠くから僕たちの町に来てくれたんだね」と、驚きと感謝を共有できるのではないでしょうか。それに、感染防止の観点からも、ナンバーを見るだけなら建物や車から出なくても大丈夫ですしね。

 

この発展バージョンとして、スーパーの野菜コーナーで「いちばん遠くの産地から来た野菜を探そう!」があります。よろしければ魚や肉でもどうぞ、時にワールド・ワイドになりますから楽しいですよ(ところで、なぜ多くの野菜は国内で、肉や魚はワールド・ワイドになるんでしょうね?)。

 

さらに、季節による産地の移り変わりや値段の上下に気づくと、いっそう広がって、もっと楽しくなりそうですね。ただ、現在の情勢下では、“みんな一緒にスーパーでお買い物”とはならないかもしれません。そんな時は、ご家庭での「冷蔵庫探検」でもいいと思います。最近、食品の多くには原産地が書いてありますから。ただし電気代には要注意でしょうか。

 

二つ目が算数です。車のナンバーには大きな数字が4つあります。この4つの数字を使って、渋滞や信号待ちの時に「前の車の4つの数字を、四則演算(たす、ひく、かける、わる)で10にしてみよう」というゲームができますよね。

 

いちばん早くできた人が勝ち。小学校の中学年くらいまではこれで結構楽しめます。でも、高学年くらいになったら、発達や学習内容に沿ってグレードアップしましょう。難易度の“ちょうどよさ”は、知的好奇心や有能さを感じさせるために非常に大切なポイントとなります。

 

たとえば、使ってよい計算方法を発展させて「分数OK」「小数OK」 と、子どもの学びの進歩にあわせて、どんどん使用できるツールを広げてゆくと楽しいですね。 加えて、求める正解の方を「10にしてみる」から発展させ、「3の倍数を作る」「最小公倍数を求める」「素数を作る」としても楽しめます。

  
 
 

大人も一緒に ―まず、我々大人がたのしんでモデルを示そう。


 

以上2つの遊びの例をご紹介しましたが、やる時に大切なポイントがあります。それは、われわれ大人も一緒に“勝ち”を目指して楽しむことです。知的好奇心にワクワクする我々の姿を、身近なモデル(お手本)として子どもに見せてあげましょう。

 

算数系の遊びだと、子どもが四則演算だけで考えている時に、あえてズルをしてマイナスや平方根を使って“勝つ”のもいいでしょう。「お母さんズルい!」と言われた後で、子どもが「何でそうなるの?」と尋ねてきたらしめたもの。それこそ、知的好奇心アップのビッグ・チャンスですしね。

 

大人も子ども以上に熱中しましょう!

   

また、子どもの有能さへの欲求も満たしてあげて下さい。子どもが勝ったときには(たまにはワザと勝たせてあげてくださいね)、「へーすごいなあ」「どうやってやったんだ?」とホメにホメて、その“裏技”を聴いてあげるとよいかもしれません。こうすることで、「自分は出来るんだ」という有能さ(自己効力感)を、子どもに自然に感じさせることが可能になるでしょう。

 

ただ、中学生にもなると、お子さんもなかなかのってきてくれないと思います。そんな時は、渋滞時の車内など時間を持て余している時をねらって(携帯圏外だとなおよいのですが…)、たまには、まず大人が「えーと、3×4-2+2…うーんちがうなあ」と勝手に始めてしまって、“うまくいかなくて困っている感じ”を出してみてはどうでしょうか。

 

うまくいけば、それを“見かねた”子どもが「しょうがなあ、たすけてあげようか」と思いつつ、「お母さん、それはねえ、“(4×2-3)×2=10”でいけるよ!」とのってきてくれるかもしれません。

    

たまには「わからない」フリをしてみましょう

  

これは、有能さへの欲求アプローチの応用です。この事例では、大人がはじめから負けを認めている状態(答えが分からなくて困っている状態)からスタートするので、子どもからしたら、“自分が勝てる場合にだけ(正解が分かる時だけ)参加すればよいゲーム”、となります。

 

その意味で「中学生にもなって計算がダメな自分」といった“有能さへの脅威”がないことが保証されるため、純粋に「お母さんより計算ができる自分が、お母さんを助けてあげられるかもしれない」という、有能さへの欲求のみを安全に獲得する機会となるのです。もちろん、必ず成功するわけではありませんが、どうせダメ元。くじけずに、いろいろ試してみて頂ければ、と思います。

 

こんな風に、「勉強できるって、すごい」「考えるって、おもしろい」「知識があると、何倍も楽しいことが見つけられる」といった体験や価値観を、家族みんなで共有できるといいですね。これは動機づけの質を高める点で、非常に有意義なことなのです。

 

いまは、新型コロナウィルスの感染予防の観点から、なかなか自由に遊べません。でも、日常のありふれたことをヒントに勉強をあそびに変え、子どもに、少しでも勉強は楽しいと思える場面を演出して、自然な内発的動機づけを育んでいけたらいいですね。大変ですが、我々大人も一緒に楽しんで、ぼちぼち頑張りましょう!

 

【参考文献】 櫻井茂男著 学びの「エンゲージメント」 図書文化社

 
  

 

子どもの勉強は「親の声かけ」で変わる
悩める子ども応援団のみなさまへ

#1 子どもをやる気にさせる! バンデューラの「結果期待」と「効力期待」

#2 子どもの「自己効力感(効力期待)」の育み方。元塾講師の心理学者が解説

#3 中学生を勉強へのやる気にさせる「マスタリー目標」。高校受験でも目標を見失わないために、望ましい“できる”の種類

#4 小中学生の勉強へのやる気を引き出すコツ。「学び」を「あそび」に変えよう!

 

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この記事を書いた人

鈴木 高志

高知工科大学 准教授。1996年、東京大学文学部卒業。関東圏大手進学塾で中学・高校受験指導に携わる中で、学習における動機づけ(やる気)の大切さを痛感。そこを原点に、筑波大学大学院・人間総合科学研究科にて動機づけの研究を始める。2014年、高知工科大学准教授に就任、現職。教員を志望する学生たちとともに、子どもと子どもを応援する大人の方々を笑顔にする方法を考え続けている。

 

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