仕事・働き方

般若が語るラッパーのリアル「これがなければ俺は超ヤバいやつだった」

2020.07.28

大人気テレビ番組「フリースタイルダンジョン」で3年半「ラスボス」を務め、昨年1月には武道館でワンマンライブを開催。押しも押されもせぬラッパーの般若さんに、今を全力で生きぬく方法についてうかがいました。
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般若(はんにゃ)

1978年10月18日生まれ。東京都世田谷区出身。1996年より本格的にラッパーとして活動を開始。2004年から現在にかけて、発売したオリジナルアルバムは12枚を数える。大人気テレビ番組「フリースタイルダンジョン」では3年半「ラスボス」を務め、昨年1月には武道館でワンマンライブを開催。映画やCMなどにも多数出演するなど、幅広い分野で人気を博している。般若オフィシャルサイトはこちら

 

 

「これなら俺にも」
それがハマったきっかけ


 

やる気ラボの勝部です。
本日はよろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

 

さっそくですが、般若さん。
般若さんがラップを始めようと思ったきっかけを教えてください。

 

元々、ラップをやるという予定はまったくなかったんですよ。DJになろうと思っていたんです。

 

え、DJ?

 

俺、高校生の時にサッカーをやっていたんですけど、先輩や顧問ともめたことをきっかけに辞めてしまったんですよ。本当は高校自体も辞めたかったんですけど、母親との約束で「高校だけは出る」というのがあったのでどうしようもなくなって…。
そういう状況で始めたのがDJだったんです。アルバイトをしてお金を貯めて、高2の時にターンテーブルとミキサーを一括で買って、それからはずっと引きこもってやっていました。

 

わずらわしい人間関係を必要としない音楽の世界に行きついたのですね。
そんな中、どうしてラップの道に進まれることになったのでしょうか?

 

高校の文化祭で、隣のクラスの女の子がラップをやっていました。その姿を見て衝撃を受けたんです。
もちろんヒップホップ自体は大好きだったので、アメリカやイギリスのレコードはたくさん持っていたんですが、それまでは日本語でラップできるという概念を知らなかった。すぐにカセットテープをもらいに行って、その人から日本語ラップのいろはを教わりました。

 

日本語ラップのどういったところに衝撃を受け、ハマっていったのですか?

 

俺は、得意なことが子供のころから何一つなかったんです。勉強ダメ、スポーツダメという人間が、生まれて初めて「これなら自分にもできるかも」というものに出会った。それがラップだったんですよ。
ただ、当時は楽しいという思いが強く、難しいことはあまり考えずにやっていましたね。

 

それでは、般若さんはラップ活動を始めてすぐに「音楽で生きていきたい!」とやる気スイッチが入ったのでしょうか?

 

 

正直に言いますと、高校を卒業してから他にも仕事はしていましたし、1stアルバムを出す前、23~4歳の時に、一度ラップ自体をやめようと思ったこともあります。

 

それはどうして?

 

ここでは言えないようなことなんですが、色々なことがマイナスすぎて、もう無理だと思ったんです。私生活もそうだし、人間関係も全部、落ちて落ちて落ちまくって…。実は、一度死のうと考えたこともあるんですよ。

 

まさか、そんな状態だったとは…。

 

でも、そうなった時によくよく考えてみたんです。精神的にも金銭的にも、ここまでマイナスでどん底。じゃあ、これ以上落ちることはないんじゃないか。それなら、本当に本気でやってみてからでも遅くはないんじゃないかって。
そんな思いから1stアルバムは生まれました。

 

1stアルバム『おはよう日本』。このアルバムがヒットしたことで、般若さんはラッパーとして自信を得ることができたのですね。

 

いいえ、実はそうではないんです。
逆に、怖くなってしまったんですよ。自分のCDが店頭に並んでいる様子を目にして、「次はいつ出せるんだろうか」「それまでに忘れられるんじゃないか」と。そう考えると先行きが見えず、思い悩んでしまいました。
それで、すぐに次の制作に取り掛かったんです。次の年、また次の年と、そういう感じで今までやってきましたね。

 

普通の人なら舞い上がってしまいそうなところですが…。自分に厳しくストイックに続けてこられたんですね。

 

一度は舞い上がったりしてみたいですよ、マジで(笑)

 

 

 

ラップには
自分の世界がある


 

般若さんは、人気MCバトル番組・フリースタイルダンジョンのラスボスとしても3年半活躍されました。たくさんの名試合を繰り広げてこられた中で、「俺も元々いじめられっ子。でも、ラップに会って変わったんだ」という言葉がとても印象に残っています。

 

幼少期にいじめられていたというのは事実です。片親だったからか、お金がなかったからか、それとも俺がデブだったからか…。小学校の学童クラブに通うようになったくらいの時から、いじめられるようになりました。具体的には、プールに沈められたり、失明させられかけたりしたことがあります。

 

それはひどい…。
そんな状況を、般若さんはどうやって乗り越えていったのでしょうか?

 

そういうことがあっても、グレたり非行に走ったりするようなことは決してありませんでした。モヤモヤしたその思いを、ラップに出会って自分の言葉で表現できるようになったのが大きかったんだと思います。

 

自らの行動で道を切り開いた、と。

 

地元の友達の存在も大きかったですね。
俺の地元は周りがみんな暴走族でしたけど(笑)みんながバイクをいじっているたまり場に、自分で作ったミックスCDとラジカセを持って行って聴かせるみたいな、そういう不思議な流れがありましたね。

 

般若さんには、自分で状況を変えられる行動力、自分を表現できる音楽、そしてそれを認めてくれる仲間たちがいた。しかし、今いじめで苦しんでいる子どもたちの中には、そういった勇気を持てない人たちもたくさんいると思います。

 

今は、俺が受けたいじめより、精神的で陰湿ないじめが多い。SNSなどの誹謗中傷とか、いろいろな事件がありますよね。
ただ本当に、死ぬのだけはもったいないと思います。顔の見えないやつが言ってきているだけのことなんで、それを真に受けては絶対にダメ。俺は、別に気にしなければいいと思うんですよ。だって、その世界が人生のすべてなわけではないじゃないですか。

 

もっと違う世界に目を向けるべきなのですね。

 

俺のところにも、SNSとかでガンガンくるんですよ。フリースタイルダンジョンに出てた時、初めて負けたあたりのときからすごかったですよ。当時は問題になるのが嫌だったので言わないようにしていたんですけど、それまで持ち上げるだけ持ち上げて、負けたら手のひらを返して叩いてくるんです。
「死ね」とか「早く消えろ」とか、そんなのが毎日バンバンくるんですよ。逆に、笑っちゃいますよね。1円にもならないのに、そんなことよくやるなって。

 

苦しくはなかったのですか?

 

俺は何を言われてもぜんぜんいいんですよ。本当の意味でそんな言葉、俺の心の奥底には届かないじゃないですか。
まあ、だからみんなもあんまり気にすることないぜっていうのが俺の本音ですね。

 

ラスボスとして走り抜けた3年半

 

【関連記事】輪入道 ラップで見つけた光「暗闇でこそ映えるもの」

 

「素直になれたらやめてるジャンル」というリリックもありました。怖いからアルバムを出し続けているというお話もありました。
般若さんは、いっそのことラップをやめてしまいたいと思うことはないのですか?

 

「今やめたらどうなるんだろう?」というのは、わりと定期的に考えていますよ。もし、肉体的なことだったり、自分を超えられないなって思うことがあったりしたら、そのときはやめるかもしれないです。
でも今は、やめたときの後悔の方が大きいだろうなと感じるから、続けているんだと思います

 

それはどんな後悔でしょう?

 

自己表現できる場所がなくなることは、容易に想像できましたね。正直、それはヒップホップじゃなくてもいいんですけど、たまたま自分を表現できる場所が今はヒップホップしかないんですよ。

 

なるほど。ヒップホップじゃなくてもいいというのは、非常に興味深いです。

 

そもそも、俺ってラッパーらしいラッパーじゃないじゃないですか。タトゥーも入ってないし、金属アレルギーなんでグリルや金も身につけられないですし(笑)でも、俺はこのスタイルがいいんですよ。それが俺なんです。

 

般若さんの音楽や言葉は、まっすぐで正直でリアル。そこが、多くの人たちの共感を呼んでいるのだと改めて感じました。

 

 

 

こんなアホもいる
それを知ってもらえたら


 

7月29日に発売される新アルバム『12發』は、通算12枚目のオリジナルアルバムです。昨年は武道館でワンマン、今年は12枚目のオリジナルアルバム…。すごいという言葉しか見つかりません。

 

そんなことはないですよ。本当にすごい人は1枚でたくさんのファンを集めるけれど、自分はそれが12枚になっただけなんで。武道館だって、過去の話ですし。

 

そのような謙虚な姿勢が、般若さんの成功につながっているのだと思います。

 

成功ですか?正直、自分は成功しているなんてまったく思っていないですよ。それに、この『12發』を積極的に聴いてほしいとも言わないです。
ただ、俺が何かのきっかけになれるのであれば。こんなやつがいて、こんなアホなことをやってるんだったら「バカらしいし、死ぬのやめようかな」と、そう思ってくれればいいんです。俺はある意味その時に、少し成功したと胸を張れるのかなと思います。

 

何枚売れたとか、どんな大きなハコでやったとか、般若さんにとっては二の次なんですね。
それでも、アルバムの紹介はぜひ…!

 

とにかく、説明しても伝わらないし気が向いたら聴いてください。「シングルマザー」って曲はけっこうまじめに作っているので、時間があるときに聴いてみて!

 

 

それでは最後に、「やる気が出ない」「やりたいことが⾒つからない」といった悩みを抱えている読者のみなさんに向けて、夢に向かって頑張るためのアドバイスをお願いします。

 

俺もやりたいことなんてなかったから、そういう人たちの気持ちがわかるんですよ。むしろ、最初からやりたいことがある人の方が少ないんじゃないですか?

 

確かにその通りですよね。

 

俺も音楽に出会ってなかったら、超ヤバいやつだったと思うんすよ。ただでさえ、ヤバいやつだって言われている類なんで。
だから、焦んないことが重要だと思いますね。この時代、答えを求めがちだけど、そういうのはいらないです。他人に動かされるより、自分で動いた方が何倍もやる気になりますから。まずは自分の好きなことを見つけて、自分の世界に没頭していければいいんじゃないですか。俺はずっとそう思っていますね。

 

般若さんがラップに出会ったように、ですね。

 

あとは、他人の評価を気にしないことですね。今日の自分がどうだったのかということを、寝る前に自分だけで考えてみてください。自分が良いと思えればそれでいいんですよ。

 

ありがとうございました!
これからの般若さんの活躍を期待しています。

 

 

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この記事を書いた人

勝部晃多(かつべ・こうた)

やる気ラボの娯楽記事担当。23歳。ハウストラブルコラムやIT関連のニュースライターを経、2019年8月より現職。趣味はプロ野球・競馬観戦や温泉旅行、読書等と幅広いが、爺臭いといわれるのを気にしているらしい。性格は柴犬のように頑固で、好きな物事に対する嗅覚と執念は異常とも評されている。

 
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