仕事・働き方

輪入道 ラップで見つけた光「暗闇でこそ映えるもの」

2020.04.3

大人気MCバトル番組『フリースタイルダンジョン』で「2代目モンスター」として活躍するなど日本のヒップホップシーンをけん引する輪入道さんに、そのやる気の源泉についてうかがいました。
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輪入道(わにゅうどう)

千葉県千葉市出身。17歳の頃に活動を開始すると、またたく間に頭角を現し、数々のMCバトル大会でタイトルを総なめ。熱い気迫で相手を圧倒するスタイルが持ち味で、人気テレビ番組『フリースタイルダンジョン』では「2代目モンスター」として活躍した。楽曲制作も精力的に行っており、2020年3月25日には自身が主宰するレーベル「GARAGE MUSIC JAPAN」から4thアルバム「光」をリリース。日本ヒップホップシーンの先頭を走り続けるラッパーだ。

つながりが
輪入道を作った


早速ですが、輪入道さん。
輪入道さんがラッパーになろうと思ったきっかけを教えてください。

高校生の時に、クラブのイベントに行ったんです。
そこで初めて生のラップを見て、「これなら俺の方がうまくできるんじゃないか」と思ったのがラッパーになろうと思ったきっかけですね。

自信があったのですね!
それまでも、遊びでラップをやったりしていたのでしょうか?

ヒップホップは好きで聴いていたんですが、それまで自分でやってみようということはなかったんです。その時もたまたま、「クラブに行ってみない?」と友達に誘われて、ついていっただけだったんですよ。

え、たまたまだったんですか…?

僕って、基本的に「受け身」の性格なんです。自分から何かをやってみようということが少ない。だから、それまでの人生で何かに熱中するという経験もありませんでした。

ラッパーになろうと思う前、将来の夢はあったんですか?

将来の夢なんてぜんぜん(笑)
みんなが普通、ぼんやりと浮かぶであろう自分の未来像さえもまったくなくて、本当に「俺、生きているのかな?」というような状態でした。

バスケ部に入ったが、高1でやめた

やんちゃな性格かと思っていたのですが、そんなこともなく?

やんちゃなイメージってよく言われるんですけど、まったくそんなことはないですね(笑)
人と話すことが苦手で、コミュニケーションがうまく取れないような人間でした

なんだか意外です。
テレビで見る輪入道さんはとにかく熱いですし、学生時代もみんなのリーダー的存在だったのかと思っていました。

むしろ、それとは真逆で、団体行動なんかは大の苦手でしたよ。それこそ、取っ組み合いをすることで、いちばん人と分かり合えるような気がしていたので(笑)
学校には、そんな自分に付き合ってくれる人も少数はいたんですが、そうじゃない人の方がもちろん多かったです。

そうだったのですね。
ではどうして、人との付き合いが苦手な当時の輪入道さんが、ラップの世界に飛び込んでいこうと思えたのでしょうか?

やっぱり人間って「つながり」ですよ。共通の何かがあることが、本当に大切なことなんです。
クラブに行けば、 自分の好きなヒップホップの話をできる人がいる。ラップをやっている人がいる。そんな環境にいると、自分もさらにやってみたくなる。人とのつながりが、今のラッパーとしての僕を作ったんです。
のめりこんでしまって、高校もあまり行かなくなってしまったんですけどね(笑)

なるほど。
それでは、もし友達が「野球場に行こう!」と言っていたら、今は違う輪入道さんだったかもしれないのですね。

そうですね(笑)たぶん今とはぜんぜん違ったと思いますよ。

やっぱり、行動が大切だと思いますか?

近くにチャンスがあるのであれば、一歩踏み出してみることはとても大切だと思います。
僕もクラブに行くまでは、こんなふうに世界が広がっていくなんて思わなかった。もし家で一人、本を読んでいるだけだったら、たどり着けなかった場所だと思います。

チャンスは自分の目の前に

逆境の中で
見つけた光


輪入道さんは、ラップを始めてからすぐに「これ1本で生きていきたい!」とやる気スイッチが入ったのでしょうか?

「ラップを続けて生きていこう」という信念は常に持っていました。
ただ、当時の環境からもラップだけで生活できるとは思っていなかったので、仕事と並行してやっていけたらと考えていました。
実際、2017年までは出版社で働きながら音楽活動していたんですよ。

えぇ、そうだったんですか!

ただ、2017年からラップの活動が忙しくなってきて、どちらかを辞めないといけない状態になったんです。会社のことも好きだったので、本当に悩みましたね。

そんな中で、ラップを選んだきっかけはなんだったのですか?

会社の局長さんに相談したら、こういうふうに言われたんです。
「人生の中で、良いことと悪いことの配分は一緒だ。悪いことばかりだと思っていても、あとから必ず良いことがある。だから、失敗することを恐れずに、今君が本当にやりたいことをやった方がいいんじゃないか」。
その言葉もあって、ラップ1本で生きていこうと決断できました。

言葉で後押しした局長さんも、決断した輪入道さんも本当にカッコいいです。

周りの人々の言葉が今の輪入道を形成している

しかし、好きなことでも長く続けるのは難しいことだと思います。
輪入道さんが、これまでラップを続けてこられた理由は何でしょうか?

今までラップをしてきて、「良かったな」ということよりも、ぶち当たった壁を越えられなかった「歯がゆさ」や「悔しさ」、そういったものが常に心に残っているんです。
僕は、自己肯定感が高い方ではない。「認めたい」「認めさせたい」という気持ちが強いからこそ、今まで続けてきたように思いますね。

どんなときに、ラップをしていて「悔しい」という感情が生まれるのでしょう?

最近では、『フリースタイルダンジョン』の3代目モンスター決定戦で負けたときに、かなり精神をやられました。どうしてもすぐに気持ちを切り替えることができず、「(対戦相手の)TKさんが何を言っていたのか」「なんで自分はあそこであんなことを言ってしまったのか」と、何日も考え込みましたね。

番組のレギュラーがかかった熾烈な戦いでした。

また、5年前に突発性難聴になった時もそうでした。
48時間以内が治療の勝負といわれているのに、自分は耳がおかしくなってから一週間以上も放置していたんです。結果、左耳があまり聞こえなくなってしまいました。
お医者さんに「なんでもっと早く来なかったんだ!」と叱られ、それからは自分を責める毎日でした。なんで俺なんだろうと、やる気を失ってしまうこともありました。

そんな中、どうやって立ち直れたのでしょうか?

へこんでいた時に、同じラッパーの紅桜さんがこう言ってくれたんです。「かたっぽ聞こえとんだったらええじゃろ」、と。
みんなが同情の言葉をかけてくれる中で、彼だけがそういうふうに言ってくれた。その言葉で、「もう一つの耳を大事にしよう」と心から思え、気持ちが楽になったんです。

「怒り」の感情から生まれた曲

そういった逆境も、輪入道さんにとって音楽への原動力となっているのですか?

そうですね。
これまでの逆境から、暗い場所にいても、たとえ天気が悪い日でも、「光は必ずさしている」ということを学びました。
3月25日に発売した4枚目のアルバム※は、 そういうことをテーマに作ったアルバムなんです。「光」というタイトルを付けたんですけど、怒りで始まって闇で終わるようなアルバムなんですよ(笑)

※アルバムの詳細や購入はこちらから

「怒り」と「闇」ですか?

「光」には、いろいろな光があると思うんです。ギラギラした明かりもあれば、ぼんやりとした明かりもある。光は、単純にキラキラしているだけのものではなく、闇があるからこそ映えるもの。
そういったことを、このアルバムを通して表現したかったんです。

何度も暗闇から光を見つけてきた、輪入道さんならではのアルバムなのですね。

ささやかな喜びを
感じながら生きる


輪入道さんって僕の中では「自信にあふれた」強い人というイメージだったのですが、こうやって取材してみると、とても腰の低いやさしい人だったのでちょっとびっくりしました(笑)

完全に逆でしたね(笑)
普段隠しているわけではないんですけど、ある程度ブランディングしているところはあるかもしれません。でも僕としては、観ている人に合わせているというわけではなく、自分のやりたい「輪入道」をやっている感覚です。

どういうふうに自分を見せていくか、ですね。

元々、「俺がやるからありだろ」という雰囲気が作れれば良いと思ってて。例えば、アイドルとのコラボとか。正統派じゃないことだけど、「でも、輪入道だからありだよね」と言わせたいんです。
僕、そういうひねくれたところがあるんですよ(笑)

そういったところが、「ヒップホップだから好き」ではなく「輪入道だから好き」という人が多い理由ですね。

それはありがたい限りです。
でも、「有り無し」の線引きが大切なんですよ。
クリスマスにサンタの服を着て、手を振りながら英語でラップをするような大きく外れたことは、やっちゃダメだという感覚は持っています(笑)

(笑)
それはそれで、見てみたい気もしますけど(笑)

謙虚な姿勢を忘れない

「やる気が出ない」「やりたいことが⾒つからない」といった悩みを抱えている読者のみなさんに向けて、夢に向かって頑張るためのアドバイスをお願いします。

僕、我慢ってすごく苦手なんですけど、「やる気」が出ないときは我慢するしかないと思うんですよ。歯車がかみ合わない時期とか、何事もうまくいかない時期って必ずありますから。
一回落ちるとこまで落ちて、そこからまたやり直すのも良いと思いますね。

「やる気」は、無理やり出そうとして出せるものではないということですね?

そうですね。
あと、これは「徳之島」という曲でも歌っていることなんですが、ささやかであたりまえの喜びこそ「幸せ」なんですよ。知らない土地で純粋な善意に触れると、自分がどれだけ恵まれているのかということに気付けるかもしれませんぼんやり過ごしている時期が、意外と回復につながったりするんですよね。

わかります。忙しい毎日の中では、小さな喜びって見落としがちなものですよね。

最後になりますが、輪入道さんの今後の活動と目標を教えてください。

これから先も、元気でラップができていれれば。本当に、そこに尽きますね。
そしてこれからも、やる気を無理やり出させようとするのではなく、みんなの肩をそっと叩くような、寄り添うような曲を作っていきたいと思っています。

ありがとうございました!これからの輪入道さんの活躍を期待しています。

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この記事を書いた人

勝部晃多(かつべ・こうた)

やる気ラボの娯楽記事担当。23歳。ハウストラブルコラムやIT関連のニュースライターを経、2019年8月より現職。趣味はプロ野球・競馬観戦や温泉旅行、読書等と幅広いが、爺臭いといわれるのを気にしているらしい。性格は柴犬のように頑固で、好きな物事に対する嗅覚と執念は異常とも評されている。

 
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