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杉浦健二郎 「野球は楽しむもの」高校・大学野球未経験者、プロへの挑戦【インタビュー】

2019.12.27

意味の無い「きつい練習」に疑問を感じ、高校・大学と、あえて野球部に所属しない道を選んだ杉浦健二郎選手。今年のBCリーグドラフト会議で全体1位指名を受けるなど、今、野球界に一大センセーションを巻き起こしています。そんな杉浦健二郎選手に、「楽しみながら夢を叶える方法」についてお聞きしました。
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プロ野球で活躍する選手は、例外なく、高校野球・大学野球と厳しい練習を耐え抜いてきた選手です。甲子園に出場するため、プロになるためには、「楽しさ」など二の次。「これをやってなんの意味があるんだ」と思う練習でさえ、無理やりやらされるということも少なくなかったはずです。

しかし、先日、そんな野球界に衝撃を与える出来事がありました。国内プロ野球独立リーグ「BCリーグ」の2020年ドラフト会議で、高校野球・大学野球未経験者が、12球団全体で1位指名(神奈川フューチャードリームス)を受けたのです。

その男の名前は、杉浦健二郎。中央大学法学部に在籍中の21歳です。
高校時代、大学時代ともに野球部に所属せず、自らが作った草野球チームで野球を楽しむ彼。 両投げ両打ち、遠投130メートルと規格外の身体能力をほこり、動画を参考に独学で勉強した投球は、MAX150キロを投げるまでに成長しました。

彼は、なぜ野球部に入らなかったのか。それなのに、どうしてプロリーグに入るまでに上達することができたのか。今日は、その秘密に迫ります。

杉浦 健二郎(すぎうら けんじろう)

【所属】    草野球チーム(中央大学在学中)
【出身地】   神奈川県相模原市
【ポジション】 投手
【身長/体重】 182センチ/69キロ
【投打】    両投げ両打ち
【生年月日】  1998年4月10日

野球は楽しむもの


やる気ラボの勝部です。本日はよろしくお願いします。
早速ですが、なぜ高校・大学と、野球部に所属しなかったのですか?

僕は、人にやらされることが苦手なんです。
僕が進んだ高校の野球部は、結構厳しいことが評判だったので入部しませんでした。中学2年生のときに、学力や立地の面でその高校に行くと決めていたのですが、そのときから既に野球部へ入るという選択肢はありませんでしたね。

高校野球への憧れや、甲子園に行きたいという気持ちはありませんでしたか?

甲子園球場の雰囲気を見たら、あのグラウンドに自分も立ってみたかったと思うことはあります。
ただ、「その程度」なんですよ。甲子園に出場するまでの過程を考えたら…。

高校野球や大学野球の練習について、どのように考えていますか?

まず、誰のために野球をやっているのかといったら、自分のためじゃないですか。そこに、指導者が「どなる」とか「やらせる」というのは、意味が無いことだと思うんです。「そんな野球、やっていて楽しいの?」って。
僕は、自分で考えて自分で行動したほうが結果も出ると考えています。自分で考えてうまくなっていくのが、野球の「楽しさ」だと思いますね。

自分で考えてプレーするのが野球。そこが野球の楽しさ

大学では、草野球チーム「相模台レイダース」を立ち上げました。
なぜ自分で草野球チームを作ろうと思ったのでしょう?

兄が草野球チームでプレーしていたのですが、そのチームは自分たちの野球を自由にやっていました。メンバーが強豪高校の出身者というわけではなく、サインプレーがあるわけでもない。だけど、とても強いチームでした。
「僕もそんなチームを作りたい」、そう思ったのがきっかけです。

どういう人たちが活躍しているのですか?

中学の同級生を誘い、次に高校の同級生を誘いました。そうしたら、その人たちが友達を呼んで、どんどん仲間の輪が広がっていきましたね。

全力で野球を楽しみたい人たちのチームですもんね。
レイダースの活動内容について教えてください。

活動は土曜日、日曜日の週2回。練習はいっさいせず、毎回試合をするようにしています。
試合をしたほうが楽しいですし、人もたくさん来てくれるので。

「相模台レイダース」。杉浦選手を中心に、笑顔が絶えないチームだ

コーチは動画
まるで漫画の主人公


指導者に教わった経験はありますか?

草野球を始めてからはないですね。いろいろな人のピッチング動画を観て勉強してきました。
その中で、千賀投手(滉大/現福岡ソフトバンクホークス)の投球フォームや山本投手(由伸/現オリックス・バファローズ)の腕の振り方、安樂投手(智大/現東北楽天ゴールデンイーグルス)のひじの抜き方は、自分にしっくりくるものだったので参考にしています。

動画を観るのと実際にやってみるのとでは大きなギャップがある気がするのですが、なにかコツがあるのでしょうか?

コツは「腰の動きをよく見ること」。人のフォームを真似しようとすると、つい手足などの末端の動きに注目しがちですが、腰のねじれを真似することがいちばん簡単な方法だと思います。腰の動きを真似すると、自然と腕や足のフォームも似てくるんですよ。

独学で150キロ、遠投130メートル、両投げ両打ち。このプロフィールを見たとき、何かの漫画かと思いましたよ(笑)
球を強く投げる秘訣はありますか?

投げる時は、手の感覚をなくすことを意識しています。腕を振るわけではなく、身体を回していって勝手に腕が振られるイメージです。いかに手の力を抜いて投げられるかということですね。

なるほど。
それでは、なぜ両投げ両打ちに挑戦しようと思ったんですか?

いろいろできると楽しいじゃないですか!
左投げってかっこいいですし、自分の身体を満遍なく使いたい気持ちがあったのでチャレンジしています。

杉浦選手のお話から、心の底から野球が好きなのが伝わってきます。

腕が勝手に振られる感覚で投げる

プロ野球への挑戦


2020年からは一度草野球を離れ、独立リーグ・神奈川フューチャードリームスでプレーすることが決まっています。
なぜ大学4年生になるこのタイミングで、入団を決断されたのですか?

1年勝負してみようと思い、決断しました。ダメでも大学に復学することができるので。

1年だけですか?

はい。2年以上、独立リーグでプレーすることは考えていません。この1年でどれだけ実力を伸ばせるか、しっかりと期間を決めて、そこで勝負してみたいと思っています。

軟式から硬式、草野球からプロリーグと、周りの環境もガラリと変わります。不安はありませんか?

基本的に、独立リーグでも自分のスタンスは曲げずにやっていくつもりなので、ワクワクのほうが大きいですね。
いやなことはいやと言う。やりたくないことは自分の考えをしっかり伝える。
そういうことに理解があるチームだと聞いているので、大丈夫だと思います。

独立リーグで結果を残せば、NPBも見えてくると思います。NPBへの思いはありますか?

僕はまだ実力がまったくないので、 この1年でどれだけ変われるかが勝負だと思います。

どのあたりを伸ばさなければならないと思いますか?

球速を上げたいですね。今は全力で150キロなのですが、それだと実戦では143キロぐらいが平均になってしまうので。
まずはベースを155キロぐらいにして、平均で150キロを投げられるようになりたい。そうすれば、おのずと変化球のスピードも上がってくると思うので、そこが伸ばしたいポイントですね。

155キロ。とてつもない数字のはずですが、杉浦選手を見ていたら将来簡単に出してしまいそうな雰囲気がありますね。

草野球の世界からプロ野球の世界へ

つらいことなら
やめたって良い


杉浦選手のような従来の型にはまらない選手の登場は、野球界に大きな衝撃を与えることになると思います。
将来、こういう野球界になっていったら良いなという理想像がありますか?

意味のないことを強要する風潮がなくなって欲しいと思います。
例えば、試合でエラーしたとき。指導者がただどなる。そして、どなられた方は「はい」と言うだけ。それでは何の意味もないし、成長もない。
体罰、パワハラ、ただ長いだけの練習。これらがすべてが改善され、自分の頭で考える、野球を全力で楽しめる環境になれば良いなと思いますね。

最後になりますが、読者のみなさんに向けて、夢に向かって頑張るためのアドバイスをお願いします。

今でこそ言えることですが、つらかったらやめれば良いんです。部活などでつらい思いをするのであれば、それを続ける必要はまったくありません。今はいろいろな選択肢があり、野球の続け方は部活だけではないですから。
僕が活躍することで、今迷っている学生たちに結果としてそういう道を示せたらうれしいですね。

ありがとうございました。
杉浦選手のこれからの活躍を期待しています!


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この記事を書いた人

勝部晃多(かつべ・こうた)

やる気ラボの娯楽記事担当。23歳。ハウストラブルコラムやIT関連のニュースライターを経、2019年8月より現職。趣味はプロ野球・競馬観戦や温泉旅行、読書等と幅広いが、爺臭いといわれるのを気にしているらしい。性格は柴犬のように頑固で、好きな物事に対する嗅覚と執念は異常とも評されている。

 
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