子育て・教育

【子育て心理学(3)】子どもの「自尊心」をどう育むか【自己価値の随伴性】

2021.08.24

「子育て心理学」の連載では、子どもの成長&やる気アップに役立つ心理学知識を、子育てにお悩みの保護者の皆様に向けてわかりやすくお伝えしています。 第3回は「子どもの自尊心」がテーマです。心理学者ジェニファー・クロッカーの「自己価値の随伴性」という考え方をもとに、子どもの自尊心をどう育んでいけばよいか考えます。

 
 
 

自分自身を何点だと思うか

  

あなたは、自分のことを何点ぐらいだと思いますか?
「え、そんなこと急に言われても」とか「失礼なことを聞かないで」と思った方がほとんどかもしれません(すみません)。

でも、怒らずに少し考えてみてください。
どれぐらい自分のことを「いいな」と思っていますか?
「まあ、人並みだし80点ぐらいかな」という方、「最近は毎日たのしいし、90点!」という方、あるいは「自分は怠け者だから、45点…」という方、人それぞれ違った答えがあると思います。

 
 
 

自分に対する肯定的な見方のことを「自尊感情」という

 

「何点?」と言われると面喰ってしまいますが、自分をどれぐらい肯定的に見ているかは、人によって、あるいは時期によって少しずつ違いますよね。そういった自分に対する肯定的な見方のことを、自尊感情といいます。

自尊心と言ったり、もとの英語そのままでセルフエスティームといったりします。

自尊感情の高さを測る質問紙もあります。もっとも有名なものは、モリス・ローゼンバーグという人が作ったものです。「少なくとも人並みには価値がある人間である」とか「だいたいにおいて、自分に満足している」などの項目を使って、自尊感情を測ります。「価値がある」と言われると考え込んでしまいそうですが、おおまかに「自分に対してもっている肯定的な気持ち」が、自尊感情だと思ってもらえばよいと思います。

     

    

   

何かに結びついた自尊感情のことを「自己価値の随伴性」という

 

ところで、どうして自分のことを「○○点」だと思いましたか?

最初に、「自分のことを何点だと思いますか?」と尋ねられて、「う~ん」と考えてくださった人もいるかと思います。

私自身は、「75点かな」と思ったのですが、なぜ75点なのでしょうか?
みなさんは、なぜ80点だったり、45点だったりしたのでしょうか?

自分に価値があると感じたり、満足できると感じたりするには、それに応じた理由があるかもしれません。「○○ができるから、自分には価値がある」「○○だから、自分には満足できる」というように、自尊感情を支えているものがあるはずです。

ジェニファー・クロッカーという心理学者は、何によって自尊感情をもてているかについて、自己価値の随伴性という考え方を提唱しました。

随伴性とはあまり聞きなれない言葉かもしれませんね。「伴っている」「結びついている」という意味です。

「野球ができる僕はいい感じ」とか「友だちがたくさんいる自分に満足している」といったように、野球や友だち関係といったことに自分の価値、つまり自尊感情が結びついていることがあります。

こうした何かに結びついた自尊感情のことを、自己価値の随伴性と呼ぶのです。ある意味では、条件付きの自尊感情と言ってもいいかもしれませんね。

     

   

      

自尊感情と結びつくものは7種類ある

  

「○○だから自分は価値がある」の○○には何が入るでしょうか?
クロッカーは、それを次の7種類だと考えました。

・競争
・外見
・他者からの評価
・学業
・家族からのサポート
・倫理
・神の愛

競争であれば「人に勝ってこそ、自分に満足ができる」とか、学業であれば「勉強ができる自分は価値がある」といったようにです。「神の愛」は、日本だと少しイメージしにくいかもしれませんね。

研究によっても、○○の部分は少しずつ違うのですが、ここで大事なのは「自尊感情をもてるかどうかが何かに結びついている」というところです。中学生ぐらいの子どもなら、「勉強」「部活」「友だちからの人気」などが入りそうですね。

   

  

  

自尊感情が何かと結びつくメリットとデメリット

     

自己価値の随伴性という考え方を聞いて、どのように思いましたか?

「自分を支えるものがあるのは、大事なことじゃないかしら」と思った方がいるでしょうか。確かにその通りで、自分の中のある部分に自尊感情が結びついていることが、モチベーションになります。たとえば、学業に自尊感情が結びついていることで、勉強時間が増えるといったようなことがあります。

その一方で、「あまり何かに拠りすぎるのも…」と思った方もいるかもしれません。自尊感情を保つのに、1つの部分に依存しすぎているのは、実はあまりよくないとも考えられます。

多くの人は、1つのことだけやって生きているわけではありません。それは子どもも同じで、勉強すれば部活でスポーツもするし、友だちとの関係もあります。

そういったいくつかの部分で、まんべんなく自分のよさを感じられる方がいいでしょう。

特に、自尊感情と結びついている部分がうまくいかなくなったときに、ダメージが大きくなります。たとえば、「自分は野球がすべてだ」という人が、怪我をして野球ができなくなったとします。そうすると、一気に自分を支えるものがなくなってしまいます。

「じゃあ、音楽の道でがんばってみようかな」とか、「友だちとうまくやれているじゃないか」といったように、他にも自分を支えている部分があれば、そのダメージが少し和らぎます。

  

   

   

まわりの大人ができることは何か

     

まわりの大人は何ができるでしょうか?

1つは、子どもが自分のいろんなよさに目を向けられるようにすることでしょう。

「自分はこれ!」と子どもは思うかもしれませんが、「こういういいところもあるじゃない」というように、子どもが「自分にはいろんなよさがあった!」と気づけるようなかかわり方ができるといいなと思います。

もう1つは、随伴させずに子どもをみて、それを伝えることです。

たとえば、「野球がうまい自分はすごい」と感じている子がいたとします。そういう子には、「確かに野球がうまいのはいいことだけど、別にそんなの関係なく、あなたがいるのはいいことよ」というメッセージが大事です。得意になっているところに水を差すかもしれません。でも、長い目でみれば、無条件に自分を「いいな」と思えることは、きっと意味をもってくると思います。

                

     

    

  


   

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(1) 子どもの成長のカギは「できない」の線を一歩踏み出すこと

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(3) 子どもの「自尊心」をどう育むか

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(5) 子どもが「勉強していない」と言うのはなぜか

 



この記事を書いた人

岡田 涼

香川大学教育学部 准教授。2008年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了。11年、香川大学教育学部講師就任。13年、香川大学教育学部准教授、香川大学大学院教育学研究科准教授就任。現職。友人関係場面における自律的動機づけの役割や、学習場面における自律的動機づけなどを主な研究テーマとしている。

 
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