仕事・働き方

アートな食を創造する「ハラペコラボ」モノだけじゃない届けたい想い

2021.08.31

ハラペコラボ アイキャッチ
ハラペコラボは福岡で活動するフードクリエイターチーム。アートに特化したケータリングやお菓子制作などを行っています。発起人は野尻知美さん。OLだった野尻さんは当初自分のため、コンセプトにこだわった食作りを始めました。しかしやがて外部へ向けて取り組んでいくように。やりがいを獲得してやる気がみなぎった野尻さんとハラペコラボの歩みをうかがいました。

 


 

ハラペコラボ ロゴ

ハラペコラボ

福岡を拠点にアートに特化したケータリングや食育ワークショップ、お菓子制作などを行う。鉱物のようなお菓子「こうぶつヲカシ」は、本物の宝石のように美しいことからSNSなどで大きな話題に。2021年6月にはレシピ本『きらきら鉱物菓子の作り方』(KADOKAWA)を刊行。

公式ホームページ:harapecolab

 

野尻知美さん

野尻知美

1981年生まれ。静岡県出身。多摩美術大学卒。不動産会社、外資系製薬メーカーを経て、結婚を機にケータリング事業を開始する。2019年法人化し、メルティングポットハラペコラボ株式会社を設立。代表取締役に就任。

 

「ハラペコラボ」とは?


  

お花畑のような「OBENTO」
お花畑のような「OBENTO」(写真:ハラペコラボ提供)

 

彩りと大胆な盛り付けが目を引く料理。お腹だけでなく心も満たされそうな一品です。

ハラペコラボは、美味しさとデザインの両方を追求したアートな食を創造し、人々に「楽しい」を届けています。

 

30cm以上立ち上げた「タワーオードブル」
30cm以上立ち上げた「タワーオードブル」(写真:ハラペコラボ提供)

 

食とアートを掛け合わせた取り組みは、OLだった野尻知美さんのふとした「やってみよう」からスタートしました。始めは趣味の範囲で活動し、やがて結婚という人生の転機に事業として取り組むことを決意。

飲食業未経験だった野尻さんが挫けずチャレンジを重ねて自己実現を叶えた、やる気ストーリーを追います。

 

すべての始まりは「ハラペコ会」


 

――食とアートを掛け合わせた取り組みを「やってみよう」と思ったきっかけは何だったのですか?

 

私は学生時代、美大で建築やデザインなどを学んでいたのですが、卒業後は不動産の営業や外資系製薬メーカーで秘書として働き、クリエイティブなこととは縁遠い日々を送っていました。

といっても仕事は楽しく毎日「やるぞ!」と打ち込んでいたのですが、アートにどっぷり浸かった4年間から一変してものづくりとは関係ない生活となり、自分の中でクリエイティブなことをしたい気持ちがくすぶっていたんです。

私のまわりの友人たちもウェブデザイナーなどクリエイティブ職に就いたものの、わりと食べていくことが優先でやりたいことができずにいるような状況でした。そこで自分たちのクリエイティブ熱を発散させるため、月1回「ハラペコ会」というコンセプトのあるホームパーティーをするようになったのです

料理担当、装花担当、音楽担当、空間演出担当とそれぞれ役割分担を決め、熱量高く取り組んでいきました。それが今日のハラペコラボに至る最初のスタートでした。

 

ハラペコ会の様子
アジアン、インド風など毎回コンセプトを決めて楽しんでいた(写真:ハラペコラボ提供)

 

――プライベートな取り組みなのに本格的ですね。仕事もしながらだと忙しかったのでは?

 

そうですね。当然ながら各自日々の仕事をこなしつつ同時並行で準備していました。でも不思議と疲れることはなかったです。自分たちの好きなようにとことんこだわって作るハラペコ会はとにかく楽しい。その楽しいがあるから仕事にも張り合いが出たように思います。

  

――ハラペコ会はどのくらいの規模でやっていたんですか?

 

最初は仲間内10人ぐらいでやっていたのですが、1年ほど続けていると、友人が友人を呼び、30人~40人ほど集まるように
そのうち参加者の中から「今度グループ展をやるからレセプションをお願いしたい」など依頼が来るようになりました。

 

ハラペコ会の様子
開催の様子をブログに記録していたことも人が集まるきっかけとなっていた(写真:ハラペコラボ提供)

 

――それでだんだん事業化を意識するように?

 

そうですね。外部に向けて活動する機会が増えてくると、「ひょっとして仕事としてできるんじゃないか」と思うようになりました。また、最初は自己満足で始めたことだったのが、人に喜んでもらうためにやるようになり、やりがいというものが生まれてきました

そうした自分自身のモチベーションの高まりがあったのと、結婚で福岡に引っ越すというタイミングが合わさり、「ケータリングの仕事をやってみよう」と決めるに至ったのです。

 

「諦めない限り成功する」で一歩踏み出す


 

――慣れない土地でケータリング事業を始めることに、不安はなかったですか?

 

「コツコツ積み上げればなんとかなる!」とわりと前向きでした(笑)。なぜかと言うと、会社員時代に「諦めない限り成功する」を経験していたからです

不動産会社に勤めていたとき、土地や物件の売買で毎日300件ほど営業の電話をかけていたのですが、煙たがられたり怒られたりする中でも1000件に1人は検討すると仰っていただき、3000件に1人は契約まで至るということがありました。ひたすらノックし続けると開けることがあると知ったのです

考えてみれば学生時代のアートとの出合いも同じことで、もともとアートが当たり前にある環境に育ったわけではなかったにもかかわらず身近に感じられるようになったのは、本を何十冊も読んだり展示会に何度も足を運んだりして、アートの世界を知ろうと努力したからです。だからケータリング事業もノックし続ける姿勢で挑みました。

  

――具体的にはどんなことをしたのですか?

 

まず足りないスキルを補うことから始めました。事業を行うとなると数字を見る力を養わなければなりません。職業訓練制度で経理を勉強することにしました。
それから自分なりに実践の機会も作りました。職業訓練校でできた友人に週1回300円の材料費をもらってお弁当を作ることにしたのです。

 

――地道な積み上げですね。

 

職業訓練を終えた後は、スペイン料理店や小料理屋などでキッチンの修行を始めました。当時29歳で新しく物事を始めるには遅いかと感じたこともありましたが、「子どもがいないうちは無茶できる」ととにかく飲食店を掛け持ちしまくっていましたね(笑)。

しかし店では決まった食材で決まった料理を作ることにとどまり、自分で工夫して作るということができません。そこでまた自己実現の機会を持つため、友人知人に誕生日会などをする際には食事のプロデュースをさせてほしいと呼びかけていました。

 

――ノックの連続ですね!確かに打っていかないことにはチャンスも巡ってこないと思いますが、初めてのことだと上手くいかないことも多いはずです。挫けないで続けていけたのはどうしてですか?

 

私はわりと失敗しても恥をかいても「どうでもいいや」って思う質なんです(笑)。失敗したらまたチャレンジすればいいと考えています。とりあえずやってみる、それで失敗しても「次だ!次!」でやってきました(笑)。

この精神のおかげで絶えず実践の機会を持て、開業までこぎつけることができたので、「失敗を恐れない」というのは何かを成し遂げるためには大切なマインドかもしれないですね。

 

――2019年には「メルティングポットハラペコラボ株式会社」と法人化されましたね。

 

行動を開始してから今の形になるまでに10年かかりました。産休以外はずっと走り続けて、夢の中でまで仕事をするぐらい無我夢中でした(笑)。現在は頼りになる仲間ができ、日々アイデアを出し合って「美味しい作品」づくりにチャレンジしています。

 

ハラペコラボ スタッフのみなさん
スタッフのみなさん(写真:ハラペコラボ提供)

 

仲間との試行錯誤で大きくなったハラペコラボ


 

――人気商品の「こうぶつヲカシ」もみなさんが一丸となって作られたのでしょうか?

 

「こうぶつヲカシ」
寒天と砂糖の和菓子「こうぶつヲカシ」。本物の宝石のような美しい見た目と、外はシャリ、中はプルンとした食感が人気。「こうぶつ」は「鉱物」と「好物」、「ヲカシ」は「お菓子」と古語「をかし」をかけている(写真:ハラペコラボ提供)

 

はい。私だけでなくスタッフそれぞれの能力を活かして作り上げました。
鉱石アクセサリーの展示会を予定しているお客様から「宝石みたいなお菓子を作れない?」と依頼を受け、まず私がデザインの試作を開始。

以前好評だった「花のかき氷」という商品に、青や紫色の琥珀糖をトッピングしていたことを思い出し、琥珀糖で宝石らしく見せてみようと考えました。

 

「花のかき氷」
「花のかき氷」。花やフルーツにはない色合いを追加するため琥珀糖をトッピングしていた(写真:ハラペコラボ提供)

 

琥珀糖は寒天を煮て溶かし、乾かすことで作ります。寒天は乾かす際にくっついてしまう性質があり、かき氷のときには扱いづらいと感じていたのですが、いっそ小さく削った琥珀糖をくっつけたら宝石のように見えるかもしれないと思いつきました。

その思惑は当たってとても可愛い仕上がりに。「これはいいものができた!」と嬉しくなりました。ただ、この段階ではまだ「美味しい」を作れていません。美味しさの追及は調理経験が豊富なスタッフにお願いしました。スタッフがまた試行錯誤を重ねてくれたおかげで、見た目と味の両方が豊かな「こうぶつヲカシ」が出来上がったのです。

他にも宝石らしく見せるカットがピカイチなスタッフなど何人もの能力に支えられて、「こうぶつヲカシ」は今やハラペコラボの代表作と言えるほど人気高い商品になりました。

 

「こうぶつヲカシ」
ラズベリーやレモンなど数十種類のフレーバーがある(写真:ハラペコラボ提供)

 

また振り返ってみれば、様々なクライアントからの要望に応えようとすることで、商品も私たちも成長してきたように思います。

宝飾業界やハイブランドからの特注品、美術館や博物館での鉱石の展示など、ありがたいことに多くの石をテーマにした作品作りをさせて頂いて、オーダーがあるたびにラボメンバーみんなでどういう作りにしていこうかと新しい形や色の出し方、味の新展開に繋げていきました。

挑戦する機会を頂き、真剣にモノづくりをしようという雰囲気が、私たちには昔から共通してあるのだと思います!

 

――「こうぶつヲカシ」は全国に発送できることから、ハラペコラボの認知度向上にも繋がったと思います。チームの努力がハラペコラボを成長させていきましたね。

 

本当にそう思います。私は自分自身にはカリスマ性などがあるとは考えておらず、ただ自分やスタッフがそれぞれの能力を活かして楽しく取り組めるようにということだけを意識してやってきました。

自分が活かせる機会や環境があると実感できれば自然とやる気が湧いていいものを作っていくことができますよね。一人ひとりのモチベーションの高まりがハラペコラボの成長を促してくれたものと思います。

 

次は自分たちがくすぶっている人に火をつけたい


 

――先日、レシピ本『きらきら鉱物菓子の作り方』(KADOKAWA)を刊行されましたが、商品以外の発信も積極的ですね。

 

『きらきら鉱物菓子の作り方』
『きらきら鉱物菓子の作り方』(KADOKAWA)

 

レシピ本は当初、ノウハウを公開するということで抵抗があったのですが、受注が増えるほど、ハラペコラボが全国に知られるようになるほど、自分たちは「世のため人のため」と社会に貢献できるような働きをしなければならないと思うようになりました。

もともと私たちはアートを当たり前に身近にあるものとして感じてもらいたいという想いで活動しています。本はその一助を担うものだと捉えるようにして出版に踏み切りました。

 

――「世のため人のため」の想いが強くなったとのことですが、今後さらに発信していきたいことなどがあるのでしょうか?

 

それは実はやる気ラボさんと似ているんですよ。ふつふつとした思いをくすぶらせている人たちのやる気に火をつけていきたいと考えています。

地方でも、未経験でも、女性だけでも、家事や子育てをしながらでも、自己実現できるということをハラペコラボが証明して伝えていきたいです。SNSやnote、YouTubeや雑誌・webメディア様からの取材など、発信する場さえあれば、ハラペコラボの働き方や考え方を伝え続けたいと思います。

 

ここでもぜひ、ハラペコラボからメッセージを送らせてください!

もし思いをくすぶらせている方がいるとしたら、小さくても少しずつでもいいので、ぜひやってみたいと思っていることを始めてみてください。そしてその取り組みをSNSなどで発信し続けることをオススメします。記録に残していくと、共感してくれる仲間やファンを作ることができ、途中で振り返ったときにはこれだけやってきたのだと自分の自信にも繋がりますよ。

新しいものを生み出すのは特別なことではなく小さな挑戦の積み重ねだと思います。記録(日記)はきっと自分のやる気の助けになるはずです。

 

――実感こもるメッセージをありがとうございました。商品もみなさんの活躍も今後の展開を楽しみにしています!

 

 


 

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この記事を書いた人

ほんのまともみ

やる気ラボライター。様々な活躍をする人の「物語」や哲学を書き起こすことにやりがいを感じながら励みます。子どもの遊びや文化に携わる人に関心が高いです。JPIC読書アドバイザー27期。



 
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