子育て・教育

【子育て心理学(1)】子どもの成長のカギは「できない」の線を一歩踏み出すこと【発達の最近接領域】

2021.05.18

「子育て心理学」の連載では、子どもの成長&やる気アップに役立つ心理学知識を、子育てにお悩みの保護者の皆様に向けてわかりやすくお伝えしていきます。 第一回は「子どもの発達」がテーマです。大人は子どもの成長のために何ができるのか、心理学者レフ・ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」という理論をもとに考えていきます。

 
 
 

「発達」の道筋をたどって個性的な人になっていく

  

子どもの毎日の成長をみるのは、保護者にとって何物にも代えがたい楽しみですね。でも、その一方で、「大丈夫かな?」と心配になったり、「どうなんだろう?」と疑問に思ったりすることも少なくないかもしれません。

「自分に似て、運動音痴だったらどうしよう」とか「自分は文系だったけど、この子は理系科目できるかしら」といったように。子どもが将来どんな人になるか、自然と思いを巡らします。

人が一生かけてどんな風になっていくかを、「発達」と言います。誰でも発達の道筋をたどって、少しずつ大人になっていきます。その道筋は一人ひとり違っていて、運動ができる人になったり、音楽が得意な人になったりします。あるいは、優しい人になったり、怒りっぽい人になったり、シャイな人になったりします。

こうした発達の道筋をたどって、子どもたち一人ひとりが他の人とはちがう個性的な人になっていきます。そして、それに応じてどんなことに興味を持つのか、やる気を出すのかといったことも変わってくるでしょう。

 
 
 

発達に大事なのは「遺伝」だけではない

 

「道筋をたどるって言うけど、運動ができるとか歌が得意って、生まれつきなんじゃないの?」と思った方もいるかもしれませんね。そう、得意なことや性格が生まれつきなのかどうかは、意見がわかれるところです。

発達には遺伝が大事なのか(生まれつき)、環境が大事なのか(生まれてからが大事)という論争がずっとありました。どちらが大事だと思いますか?

結論から言うと、「どっちも大事」ということで落ち着いています。

学力や運動能力、性格などは、生まれつきすべて決まっているのでも、生まれてからすべてが決まるわけでもありません。生まれつきの遺伝の要素と、生まれてからの環境の要素が合わさって決まります。たとえば、学力の場合は遺伝の影響が50%程度と言われています。

 
 
 

環境作りのポイントは「発達の最近接領域」

 

やはり環境も大事なようです。そうすると、子どもの将来を思い描きながら、よりよい環境を整えてやりたくなりますよね。日本人メジャーリーガーや最年少プロ棋士の姿を見て、「あんな風になれるように、がんばって!」と応援したくなります。

でも、ちょっと待ってください。子どもからしたら、メジャーリーガーやプロ棋士は少し遠いかもしれません。発達の道筋のずっと先に素敵なモデルをイメージするのは、とても大事です。ただ、小さい子がいきなりプロを目指してがんばったり、まわりの大人がそれを目標にして応援したりするのは難しそうです。

発達に関する有名な考え方に、心理学者レフ・ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」というものがあります。保育士試験や教員採用試験で出題されることもある考え方です。

発達の道筋を考えると、「今の段階でできること」と「今はまだできないこと」があります。たとえば、「指を使って簡単なたし算はできるけど、まだ式を書いてたし算をするのは難しい」とか「自分の思っていることはうまく伝えられるけど、相手の気持ちを考えて話すのはまだあんまりできない」とか。発達の道筋のどこかに、「今はここまで」という区切りがあります。

「今はここまで」の線を超えるところは、まだ自分ではできないところです。でも、線の向こうに「ちょっと惜しいところ」がありますよね。自分一人ではできないけれど、まわりの大人(お兄ちゃんやお姉ちゃんでも構いません)が少し支えてやればできるところです。この「ちょっと惜しいところ」を発達の最近接領域といいます。

トランプのゲームで、子どもが一人だとうまくできないけれども、親とチームでなら結構ゲームに参加できたりすることがありますよね。あるいは、お兄ちゃんとその友だちが遊んでいるところに弟が混ざって遊んでいて、「あれ、あんなことできたっけ?」と気づいたりすることがあるかもしれません。こういうところに、発達の最近接領域が見え隠れします。

 
 
 

大人の役割は子どもの「発達の最近接領域」を見つけてサポートしてあげること

  

実は、子どもに一番やる気をだしてがんばってほしいのは、この「ちょっと惜しいところ」です。すでにできることばかりやるのではなく、まだまだできそうにないところにチャレンジするのでもなく、今からほんの少し先のところに目を向けてがんばる。そうすることで、子どもは少しずつ伸びていくことができます。

では、大人の役割は何でしょうか?まずは子どもの「今はここまで」と「ちょっと惜しいところ」をうまく見つけることでしょう。運動でも勉強でもいいのですが、お子さんの「ちょっと惜しいところ」が何か思いつきますか?

「ちょっと惜しいところ」が見つかったら、子どものやる気をそこに向けてやることが大切です。例えば、「自分の思っていることはうまく伝えられるけど、相手の気持ちを考えて話すのはまだあんまりできない」子どもであれば、「自分が相手の立場だったらどう思うか聞いてみる」というようにです。

遠いゴールを見つつも、「ちょっと惜しいところ」を子どもと共有しながら一緒にがんばる。そんなかかわり方が、子どもの成長を促すよい環境だといえるでしょう。

   

  

  

  


   

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(1) 子どもの成長のカギは「できない」の線を一歩踏み出すこと

 



この記事を書いた人

岡田 涼

香川大学教育学部 准教授。2008年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了。11年、香川大学教育学部講師就任。13年、香川大学教育学部准教授、香川大学大学院教育学研究科准教授就任。現職。友人関係場面における自律的動機づけの役割や、学習場面における自律的動機づけなどを主な研究テーマとしている。 。

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