仕事・働き方

【コケクリエイター 岡村真史さん】日常に潤いを届けるコケの世界。「少しの勇気」と「コツコツ続けること」で道が開けた

2023.06.9

観葉植物をアレンジしたインテリアが広がりを見せる中、苔(コケ)を育てて愛でる「コケリウム」がブームになっています。「小さい頃から動植物が好きだった」という岡村真史さんは、商品開発やワークショップでコケの魅力を広めながら、新たなレイアウト技法を発信し続けています。また、高校の時から続けてきたブレイクダンス歴は20年に。好きなことを継続し、道を切り拓いた強みについて伺いました。

     


     

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岡村真史(おかむら・しんじ)

1987年5月12日生まれ、大阪府出身。大学で海洋学を専攻し、卒業後に観賞用水槽をはじめとしたアクアリウム用品の大手メーカーにて6年間勤務し独立、コケを用いたインテリアを提案するWEBサイト[コケのインテリア コケリウム]を2016年に創設。2019年5月にテレビ東京『TVチャンピオン極~KIWAMI~ 苔箱庭王選手権』に出演し優勝するなど、数々のメディアで活躍。コケリウムの魅力をより多くの人に伝えるべく、SNSなどで日々さまざまな状況を発信している。また、ブレイクダンスのパワームーブというクルクル回転する動きでは日本トップレベルの技術を誇る。[ブレイクダンススタジオ パワームーブ大阪]のオーナー兼インストラクターで、日本ブレイクダンス青少年育成協会の大阪府部長も務める。

公式サイト:コケのインテリア コケリウム
ダンススタジオ公式サイト:ブレイクダンススタジオ パワームーブ大阪
Instagram:kokerium

        

     

     

小さな変化を愛でるコケの魅力


     

――最近はコケの魅力に注目が集まっていて、「山ガール」のように「コケガール」も増えているそうですね。岡村さんは日々コケと向き合っている中で、その魅力はどんなところにあると思いますか?

     

コケの魅力は、他の植物にない落ち着きのある緑色で奥ゆかしさを感じさせるところですね。あとはゆっくりと成長していくところ。少しずつ変化していく様子を観察して楽しめるところが魅力だと思います。

     

もし皆さんが山へ遊びに行く機会があったら、歩きながら足元にふと目を向けてみてください。きっと可愛いコケたちを見つけられるはずです。

     

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「洞窟」(写真:本人提供)

――繊細な生き物だと思いますが、育てる時に細やかな目配りが必要なのでしょうか?

     

作り方や選ぶ容器にもよりますが、そんなに難しいものではないですよ。私もいろいろな動植物を育成したことがあるのですが、その中でもコケはずば抜けて簡単だし手軽だと思います。

     

――岡村さんはコケリウムの他にきのこを使ったキノコリウムなども開発されていますね。ご活動内容について改めて伺ってもいいですか?

     

コケリウムの事業は通販がメインで、商品の品質にこだわりをもって日夜開発・発送をしています。発送先は一般の方、水族館や植物園、同業他社など様々です。コケリウムやきのこリウムのキットをはじめ、観葉植物・木・石・土・フィギュア・メンテナンスグッズなどコケリウムにまつわるものを総合的に販売しています。また、様々な企業様でコケリウムの出張ワークショップや自社スタジオでもワークショップを開催しています。その他には植物園などでのトークショーや展示会ブースでの作品展示など幅広く活動しております。

     

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定期的にワークショップを実施している(写真:本人提供)

     

――とっても忙しそうですが、 1日のスケジュールはどのような感じですか?

     

朝から夕方までコケリウムの事務所で仕事、同じ建物の1階がダンススタジオになっているので、そこで夕方から夜中までダンスレッスンや自身のスキルアップの為の練習をしています。

     

     

     

動植物に魅了され、海洋学部へ進学


     

――小さい頃は、どのようなことが好きだったんですか?

     

小さい頃から水槽で魚を飼ったり、花や野菜などを育てるのが好きな子どもでしたね。とにかく動植物が好きで、自然の中で遊んだりするのが好きでした。父に釣りに連れて行ってもらったり、世界最大級の水族館と言われる大阪の「海遊館」や、植物園「咲くやこの花館」にもかなりの頻度で連れて行ってもらっていました。好きだから連れて行ってもらったのか、連れて行ってもらったから好きになったのかは覚えていないのですが(笑)。興味のあるものを見つけると、すぐに名前を調べていました。

     

――動物もお好きだったんですね。

     

生き物はなんでも好きでしたが、その頃は魚が一番好きでしたね。

     

――学生時代はどのようにその興味を伸ばしていったんですか?

     

高校生の頃は、平日は学校で勉強とダンスをして、週末にアクアリウムを作っていました。アクアリウムではレイアウトの奥深さを知り、観賞魚の繁殖に成功するなどの体験から、その魅力にどんどんのめり込んでいきました。

     

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「清流」(写真:本人提供)

     

大学は、東海大学の海洋学部に進学しました。そこでアクアリウム(水生生物の飼育設備)への興味関心がさらに高まったんです。水槽の中に水辺と陸地を作ってコケを育てたり、中に滝を作ったりして楽しんでいましたね。

     

――研究をしながら世界観を広げていったんですね。滝を自分で作って愛でるなんて、渋いですね(笑)。

     

そうですよね(笑)。山の風景を家の中に切り取って、それを観察するのが楽しかったんです。

     

――大学を卒業した後はどのような道に進みたいと考えていたのですか?

     

最初は水族館の飼育員になりたかったのですが、大学の卒業論文で、水族館に短期間の住み込みをさせてもらい、展示のノウハウみたいなものを働きながら学んで、研究日誌をつけて卒論を書いたんです。興味の方向性としてはバッチリ合っていたんですが、水族館の大変さも知って、「自分にはそこまでできるかな?」と思って。最終的に勤めるのはやめて、アクアリウム用品の大手メーカーに入社したんです。

     

     

     

「コツコツ続けること」で軌道に乗った


     

――アクアリウム用品の大手メーカーでは6年間お勤めになりましたが、独立しようと思われたきっかけはなんだったんですか?  

   

日々仕事で忙殺されて「自分は本当にこのままでいいのだろうか?」と考えたんです。それで、「もし自分で会社を立ち上げたら、1日に何時間残業したとしても自分の裁量で自分がやっていることだから納得できるだろうし、それができるような何かがあったらいいな」と考えました。これなら勝負できるな、と思ったのがコケでした。

     

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インテリアとしてのコケの魅力を発信し続けている(写真:本人提供)

          

――なるほど! 参考にした企業などはありましたか?

     

参考になる企業はなかったので自分で一から考えました。今でこそ増えましたが、当時はコケのビジネスというのはほとんどなかったですし、特に通販でちゃんとした商品はほとんど流通していなかったですね。

     

――起業する上で、不安や躊躇はなかったですか?

     

心配はありましたけど周りの人に支えられてたくさんの協力を得ることで前に進めました。支えていただいている方々には毎日感謝をしています。その後押しがあって、ほんの少し勇気を出せたからこそ始められたんだと思います。

     

ーーその決断力や行動力など、ご自身の強みは小さい頃から意識していたんでしょうか。

     

あまり意識したことはなかったですね。普通の人よりも仕事が早いかもしれないな、くらいの自信はありましたが、だからといって会社が成功する保証があるわけではないですから。起業するときは怖さもありましたが、「絶対にいつか誰かがやるし、まだ誰もやっていないからやったほうがいい」と思って決断しました。

     

――独立してから生かされたご自身の強みはありますか?

     

毎日、コツコツ続けることだけが取り柄だと思っています。動植物を育てることや、掃除とも似ていますね。大掃除をするのは大変ですが、毎日ちょっとずつやれば汚れは溜まらないし、年末に大掃除をする必要もないじゃないですか。

     

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経営するダンススタジオ(写真:本人提供)

     

そういう小さいことをルーティンにして、「この時間には必ずこれをやる」とか、「1日の終わりにこれをやる」という決め事を自分で作って毎日ちょっとずつやることが得意なんです。「いつかなんとかなる」と思って、継続して諦めずにやり続けることが大切だと考えています。

     

――小さなことをコツコツ続けることって、実はすごく難しいですよね。たとえばどんなことをやり続けてきたのでしょうか。

     

みんな面倒くさいからやらないだけで、難しいことではないと思うんですけどね。SNSの投稿なんかもその一つだと思います。1年前に「パワームーブ」というブレイクダンスのクルクル回転する技専門のダンススタジオを開業したのですが、毎日コツコツ投稿し続けることで最近ではインスタグラムのフォロワーさんが1.6万人を超えました。

     

あとは、1日の最後に必ず会社の掃除をしています。出したものを片付けるとか、床を履いたり、拭いたりするのも10分ぐらいで終わります。それで、次の日会社に来た時に最高の状態で仕事がスタートできる。ごちゃついた環境だと仕事も雑になりますからね。

     

     

     

品質の良いものを提供し、業界をリードする存在に


     

――2019年にBSテレ東の「TVチャンピオン極~KIWAMI~ 苔箱庭王選手権」に出演して優勝されました。反響はありましたか?

     

はい。植物園などのオフィシャルな施設からゲストとして呼ばれやすくなりましたね。

     

――新たなレイアウト技法などを発信されるときに、どんなことからインスピレーションを得ているんですか。

     

山などで風景を見て、「この景色を持って帰りたいな」とか「写真を撮りたいな」という場所を、コケリウムで再現することが多いです。ハイキングをして観察したり、川釣りに行ったり、植物好きの人と一緒に山を歩くことでアイデアを得て、それを実現するためのレイアウト方法を練ります。

     

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「階段」(写真:本人提供)

    

――ありのままの自然を再現しているから、鑑賞していても癒されるんですね。岡村さんにとって、どんなことがお仕事の原動力になっていますか?

    

最近は同業他社も増えてきて、フリマアプリなどでも販売されることも多く見られます。その中で、当店はその品質の高さで評価をいただいています。TwitterのコメントやYouTubeのライブなどでお褒めの言葉をいただいたり、比較画像を出していただくこともあって。「良い品質の商品が届くから愛するペットにも安心して使える」「売り買いの枠をこえたコケへの情熱を感じる」というように言っていただけると、「頑張ってよかったな」と思うし、これからも良いものを提供し続けようと思います。そう考えると、SNSが一つの原動力になっていますね。  

    

――これからチャレンジしたいと思っていることはありますか?

    

お金がたくさんあったら、都会に水族館と植物園を足したような自然あふれる大きな施設を作りたいですね。その中で魚釣りも楽しめるような事業にチャレンジしてみたいですね。一生できないかもしれませんが(笑)。

    

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トークショーでもコケの魅力を発信(写真:本人提供)

    

――そういう観光スポットがあったら癒されに行きたいです!  最後に、自分の好きなことを突き詰めて道を切り開くためのアドバイスがあればぜひお願いします。

    

僕は、誰かが既にやっていることを真似してやるのはなしかな、と思います。マーケティングでも、前例があることを始めるときは基本的に弱者なので、大手と戦えないし、勝てないんです。だから、まずは得意なことで自分なりのアイデアを一つ持つことが大事だと思います。

    

そのアイデアがなかなか出ない人は、自分ができそうなことをポストイットやメモ帳になるべくたくさん書いてみて、その中で周りの人が助けてくれそうなことや、実現できそうなことにチャレンジしてみてほしいです。今は得意でなくても、これから好きになったり得意になったり、仕事になるかもしれないですから。自分しかできないことを大事にしてもらいたいですね。

    

――これからも癒されるコケリウムに期待しています。 ありがとうございました!

    

 


 

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この記事を編集した人

ナカジマ ケイ

スポーツや文化人を中心に、国内外で取材をしてコラムなどを執筆。趣味は映画鑑賞とハーレーと盆栽。旅を通じて地域文化に触れるのが好きです。

 
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