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【ボードゲームデザイナー・ミヤザキユウ】始めてたった2年でプロのボードゲームデザイナーに。原動力になった「思い込み力」とは?

2022.04.15

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ミヤザキユウさんは、1992年生まれのボードゲームデザイナー。ボードゲーム作りは2016年に趣味としてスタートしました。同年にゲームクリエイター集団「東京ゲームメイカーズ」の一員として活動を始め、2年後の2018年にはボードゲーム制作会社「株式会社バンソウ」を創業。一般向けボードゲームだけでなく、法人向けに社員研修などで使えるボードゲームをオーダーメイドで制作するなど、ボードゲームの可能性を広げる仕事にも携わっています。2022年4月からは「株式会社VITA」に活躍の場を移し、「学びの入り口」として使えるボードゲームの開発を予定しています。ミヤザキさんがボードゲーム作りに熱中する理由を伺いました。

   


 

ミヤザキユウさん

ミヤザキユウ

ボードゲームデザイナー/株式会社VITA
1992年生まれ。企業の課題を解決するボードゲームの制作やコンサルティングを手がける。『トポロメモリー』『サラダマスター』など一般向けのボードゲームの出版も多数。

note:ミヤザキユウ/ボードゲームデザイナー

          

 

 

実際にボードゲームが作られているところを見て、「自分にもできる」と思い込めた


 

――ボードゲームを作り始めたのは社会人になってからと聞きましたが、ボードゲームとの出会い自体はいつごろだったんでしょうか。

 

いわゆるボードゲームを初めて遊んだのは大学時代に、先輩や同期と空いている時間に遊んだのが最初だったと思います。正直、特に劇的な出会いというわけではありませんでした(笑)。もっと広い意味でいうなら小学生のころに家族と人生ゲームをしてはいました。でも、どちらかというとデジタルゲームが好きで、小学生のころは遊びすぎて親に怒られるということもありましたね。

     

――ボードゲーム作りを始めたきっかけは何だったんでしょうか。

   

2016年に、ボードゲームを作るワークショップにたまたま参加したのがきっかけです。そこで初めて実際にボードゲームを作る人と出会いました。

ゲームクリエイター集団の「東京ゲームメイカーズ」は、このワークショップで出会った仲間と一緒に結成したんです。2016年に結成してから現在まで、東京を拠点にアナログゲームを作り続けています。

 

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「東京ゲームメイカーズ」活動の様子。(写真:本人提供)

  

――最初に作ったのはどんなボードゲームだったんですか?

    

ポーカーをアレンジしたゲームです。ポーカーは、1対1や1対nの対戦であることが多く、プレイヤー側はそれぞれ一人だけで戦います。

それを2対2でやる、「チーム戦ポーカー」が最初の作品でした。

チームメンバーがお互いの手札を知らない中で、場にカード出していって役を作るというゲームです。チームメンバーがどんな役を作ろうとしているのか、相手のチームがどんな役を作ろうとしているのかを考えながら、カードを選びます。最後のカードを出した時点で役を比べて、勝敗が決まります。

    

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2016年、ボードゲームを作るワークショップでの制作風景。(写真:本人提供)

 

――面白そうですね!

    

はい、遊ばれた方の評判は良かったです。でも実はトランプがあれば遊べるゲームなので、商品としての展開はイベント販売のみになりました(笑)

    

――確かにそうですね(笑)。ボードゲーム作りを始めてすぐに夢中になれましたか?

   

最初からすぐにはまったわけではないですね。ボードゲーム作りは地味な工程が多いので、いきなりはまる人は少ないかなと思います。

でも、ボードゲームを作っている人と会えたこと、そしてボードゲームを作る仲間と出会えたことで、少しずつのめり込んでいきましたね。

まず、実際にボードゲームを作っている人と会えたことで、同じ人間がやっているんだと実感できたんです。それまでは、ゲームをプレイしていても、どんな人間がどのように作っているか全く想像ができませんでした。でも、実際に作っているところを見ることでイメージができて、「同じ人間がやっているんだから、自分にもできる!」と思い込むことができました。

また、新しいことを始めるときはみんな挫折しやすいものですが、始めから苦楽を共にできる仲間がいたのも大きかったかなと。

その後、ボードゲームが形になってきたり、面白いものができたなと実感できるようになったりすると、ボードゲーム作りが楽しくなってきました。

  
  
  

ボードゲームを広めるには、ボードゲーム作りの謎を言語化しなくてはいけないと思った


 

――東京ゲームメイカーズでは、初期の段階からイベントに出店してボードゲームの販売もされていたんですよね。最初から販売して広めていくことにも興味があったんでしょうか。

 

イベントに出店したのは、ワークショップの講師の方が作ったものを販売して広めていくことを勧めてくれたからです。個人的にはボードゲームを作ることだけが目的でしたが、わかりやすい次の目標を立ててもらえた感じです。

  

――周りの勧めがあったんですね。その後、ボードゲーム作りを始めてから約2年後の2018年にはボードゲームの制作会社「株式会社バンソウ」を起業します。なぜ趣味から仕事にしようと思ったのでしょうか。

 

ボードゲームを作る過程で、noteにボードゲームの作り方の記事を書いていました。その記事に、思ったよりも大きな反響をいただいたんです。その時に、ボードゲーム作りの技術やノウハウを求めている人って実は多くて、言語化できればもっと需要が生まれるんじゃないかなと思いました。

ビジネスの場合、きちんと言語化して相手に納得してもらって話を進めることが必要です。それができれば、ボードゲームはもっと大きな市場になるのではないかと。そういった面で自分ができることがあるんじゃないかなと思ったのが仕事にしようと思ったきっかけです。

    

――ボードゲームが作られるプロセスが言語化されるとビジネス的にどういったメリットが?

    

そもそもボードゲームを作ってほしいとお客さんが思ったとき、どうやって作っているかがわかった方が頼みやすいと思うんです。

例えば野菜を買いたいと思ったとき、どう作られたか全くわからないものを買うのは怖くないですか?「この野菜美味しいらしいけど、どうやってできたものなのか想像もつかない」という状態だと買いにくい。

ボードゲームも同じです。ただひらめきだけで作っているのではなく、ロジックがあって、再現性のあるプロセスで作られているものだと理解してもらうべきだと考えました。

     

――今までボードゲーム作りというものがあまりに謎めきすぎていて、それが活用されにくさにつながっていたのではないかと。

    

そういう仮説がありました。

 
 
 

ボードゲームなら失敗しても問題ない形で「経験」ができる


 

――株式会社バンソウでは、主に人材育成などの用途で使えるボードゲームを法人向けにオーダーメイドで制作しています。ボードゲームがHR(ヒューマンリソース)分野で活かせると気づいたきっかけは?

 

ボードゲームはメディアだと思っているんです。メディアというと、映像や音楽やテキストなどを思い浮かべると思いますが、ボードゲームは「体験」で伝えることができるメディアだと思っていて。

ビジネスで、このボードゲームの「体験」で伝える力をもっと活かせるんじゃないかなと思ったのがきっかけですね。

多くの仕事で、成長するには結局「経験」から学ぶことが大事だと言われます。テキストや座学で理論を学ぶことも重要ですが、それを身につけるための経験が必要だと。

ボードゲームなら、失敗しても問題ない形で様々な経験ができます。

   

――ボードゲームをプレイすることで、現場を疑似体験できるということですね。

   

また、通常のOJTだと、ポジションが固定されてしまいます。ボードゲームなら自分の役割以外のこともできますよね。極端な話、最初から社長になることもできます。

いつもと違うポジションで仕事をすると他の人の立場を考えて仕事ができるようになります。それで、職場のコミュニケーションやチームビルディングがうまくいくようになったりしますね。

    

――実際にどんなゲームを法人向けに作ったのでしょうか。

 

例えば株式会社スマイルガーディアン様からのご依頼で制作した『アッパーランド』 という遊園地の経営をするゲームがあります。つぶれかけている遊園地を6人一組で再建するというテーマで、経営管理やアトラクション担当、飲食担当など6人それぞれ役割が違う役割でプレイします。制限時間内で、遊園地を再建するために何をすべきか意思決定して進めていきます。

スマイルガーディアン様はテーマパーク向けのコンサルティングをされていて、そのノウハウを入れ込んだので、実際の業務と非常に近いものをボードゲーム上で体験できるものになっています。

     

アッパーランド
アッパーランドプレイ中の様子
『アッパーランド』をプレイ中の様子。ボードゲームを通して、立場や職種を超えたコミュニケーションができる。(写真:株式会社スマイルガーディアン提供)

      

――「一般向けゲーム」と「企業向けのゲーム」で作り手として何か違いを感じることはありますか?

    

一般向けゲームは、僕自身やチームで「こういうものが面白いんじゃないか」という仮説から始まることが多いです。

一方、法人向けゲームはもともと「伝えたい何か」があって、それを伝えるためのメディアとしてゲームを作るという前提があります。最初のテーマが内にあるか外にあるかという違いですね。

でも、どちらにせよ、その後ゲームを作っていくプロセスは大きくは変わらず、自分としても楽しくやらせていただいています。


 
 

「作り手ならではの快感」にのめり込んでいった


    

――ボードゲーム×HRという新しい領域を開拓したり、会社を起業したりするほど、「ボードゲーム作り」に熱中した理由は?

    

ボードゲームを作ることでしか得られない快感に出会ったのが大きいと思います。

ボードゲーム制作の8割くらいは細かい調整など、きつくて地味な作業が多いんです。でも、一つのアイデアで制作上の問題をエレガントに解決できたときや、テストプレイで遊んでくれた人がいい表情だったときに得られる喜びは、作り手でしか得られません。それに気づくことができたのは良かったなと。

僕が尊敬しているクリエーターの方が「ゲームは作り手が一番楽しくて、その楽しさを他の人にもおすそ分けしている状態が良い」というようなことを言っていたんですが、それに近いかもしれません。

ただ、僕はボードゲームでしたが、人それぞれ「作り手ならではの快感」を得られるものがあるんじゃないかなとは思います。

あとは、いかに自分はそれが好きだと思い込めるかですね。すべては思い込みだと思います。

    

――「思い込み」というのはご自身の中で大事なポイントですか?

    

恥ずかしながら、じっくりと市場調査などをせずに起業したんです。でもそういうことをしていたら起業していなかったかもしれません。「ボードゲームってちゃんと言語化してビジネスにしている人少ないのでは?いけそうじゃん!」と思い込めたから始められたのかなと。

人間はリスク回避をしたがる生き物なので、普通の頭をしていると起業はなかなかできないと思います。ある意味、ねじが外れた状態で始められて良かったんじゃないでしょうか。

    

――ミヤザキさんが起業したように、自分も何か始めたいけど、何からやれば良いかわからないという人も多いと思います。挑戦への第一歩を踏み出すにはどうしたら良いでしょうか?

    

既に自分がやりたいことをやっている人を探して会ってみるのがいいと思います。できれば、実際にやっているところを生で見せてもらう。そうすると、「同じ人間なんだから自分にもできるぞ!」と思い込めるかもしれません。

    

――「まずは会ってみる」のが効果的なんですね。最後に、今後の目標を教えてください。

    

実は現在、バンソウから株式会社VITAに所属を変えて、ボードゲームの制作をおこなっています。バンソウでの活動を踏まえて、ボードゲームの可能性をもっと拡張するための動きをしていくためです。

VITAは実はIT企業なのですが、専門領域が非常にニッチゆえに創業から人材育成に力を入れてきた会社です。その教育ノウハウを活かして、先の研修の事例のようにより効果的な学びの入り口としてのボードゲームを開発していこうと思っています。

また、ボードゲームを作られている方がもっと楽をできたり利益を上げたりしやすくなるようにしたいなと思っています。

皆さん才能があって人柄も良い人ばかりなんです。別のお仕事をしながら、余暇の時間で制作をされている方も多いです。すごいことなのですが、一方でご負担も大きくて、それゆえに創作を続けるのが難しくなってしまう方もいます。

僕らはビジネスでボードゲームに携わっている以上、そういった方達が創作を続けやすくなるようなお手伝いをしていきたいですね。

    

――ありがとうございました!

    

    

    

 


 

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この記事を書いた人

ミズタ

やる気ラボライター。趣味は映画と音楽。インタビューとコラムをメインに書いています!



 
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