新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
仕事・働き方
2023.08.16
マーメイドセイレーン
高校卒業後ハリウッドへ渡り、映画製作と演劇、モデルを5年間学ぶ。帰国後しばらくして、長年の人魚になる夢を叶えるため、「マーメイドセイレーン」を開業。2015年7月に「マーメイドプロジェクト」を立ち上げ、現在まで「プロの人魚」として活動する。
公式HP:Mermad Seirenマーメイドセイレーン
Instagram:mermaid_seiren
YouTube:Mermaid Seiren
――早速ですが、セイレーンさんは人魚の活動をされているそうで、すごいですね!
ありがとうございます! 海外には20年以上前から「プロフェッショナルマーメイド」という人魚の仕事があったのですが、私は約8年前から名古屋を拠点にプロの人魚として活動しています。
――「プロの人魚」というのはどんなことをするのでしょうか?
人によってさまざまですが、私はショーパフォーマンスをしたり水中モデルをしたり、人魚イベントのコーディネートや人魚の泳ぎのコーチもしています。またヒプノセラピストでもあるので、水に潜らずに人魚になる感覚を味わってもらうヒプノセラピーもやっています。
沖縄で撮影された水中動画(撮影:広部俊明氏)
――いろんなことをされているんですね。やはり気になるのはパフォーマンスなのですが、その魅力について聞かせてください。
見ていただく方にとっての魅力はまず、「いるはずのないものが目の前にいる」というのを味わってもらえることだと思います。尾ヒレがあって、人間が泳ぐのとはちがう動きで泳いでいて、しかもダイビングマスクをつけていない。その存在を不思議に感じると思います。
長い髪が水中でなびいたり飾りがきらきら光ったりする様子もきれいに映って楽しんでいただけると思うのですが、ただきれいなものを見るだけじゃなく、夢の国に来たかのような感覚を味わってもらえるのが人魚パフォーマンスの面白いところです。
人魚ショーのプロモーション動画
(映像提供:(株)マハロガーデン
撮影:57inc.(フィフティーセブンインク)動画制作サービス)
過去行なわれた人魚ショーの様子
――異世界に入り込んだ気分が味わえるんですね。
パフォーマンスする側も同じことを感じているんですよ。写真を見ていただいたらわかるように人魚になるには足に「フィン」(魚の尾ひれを模した用品)をつけるのですが、これだけでもう異世界の住人になった気分になります。なぜかというと、フィンは両足を拘束するものだからです。足が使えないなんて非日常ですよね。自分が生きている世界とはちがう世界に入ったような気になります。
――なるほど。でも両足が拘束されるなかでどうやって泳ぐのでしょうか?
マーメイドスイムと言うのですが、腰回りの体幹を使いながらドルフィンキックのように両足を同時に上下させて泳ぎます。
水深8mのプロ用プールでの練習
(レクリエーションマーメイドの規定では水深5mまで)
――なんだか難しそうですね。
ふだん体を動かすことに慣れていない人には難しいかもしれません。マーメイドスイムのコーチをしていると、たまに自転車をこぐような感じでひざが前に上がってしまう方がいらっしゃいますね。人魚らしく見せるには、体全体でしなやかに泳ぐのがポイントです。
水深5mのプールでの人魚練習会
――セイレーンさんも最初は難しかったですか?
フィンの素材であるシリコンが重く、かつ両足拘束だったので、初めてのときは私も少し戸惑いました。しかし私は3歳の頃から人魚に憧れ、自分なりに模索して人魚になる準備をしていたので、それまでの経験が泳ぐ力になりました。また練習にはレスキューダイバーさんにも入ってもらって、安全に配慮したことも助けになりましたね。
――人魚に憧れるようになったのは、何がきっかけだったのですか?
3歳の頃に読んだ絵本がきっかけでした。絵がきれいで印象に残ったというのもありますが、そこに描かれている人魚たちの楽しげな姿に惹かれて。当時私は水泳教室に通い始めたばかりで、コーチに早く慣れるようにとプールに放り込まれたりして水に入るのが全然楽しくありませんでした。いつも泣いていたんです。でも絵本を見てからは、自分も人魚のように水中を自由に舞いたいと思うようになったんです。
――水や泳ぐことへのイメージが変わったんですね。
そうですね。でも早く泳ぐとか技術を磨くことには興味がなくて、ひたすら潜水ばかりするようになって(笑)。潜って水中メガネで水の中の世界を眺めるのが好きだったんです。その後水泳教室は、選手になる気はないからいいやと小4でやめました。
――ではどうやって人魚を目指すように?
目指すも何も、「13歳になったら尾ヒレが生えてくるんじゃないか」と思い込んでいたんですよね(笑)。13歳というのにとくに意味はないのですが(笑)。とにかく人魚への思いが強すぎて、きっとなれると信じていました。でもその年になったとき何も起こらなかった。やっぱり思っているだけでは人魚になれなかったですね。
――そのときはいったん諦めたのですか?
いえ、思いを捨てるというのはできなくて。かといって、誰かになりたいと言ったところでなり方を教えてもらえるわけでもなく。自分の中で何をやったら人魚の夢に繋がるのかを考えていました。
――具体的にはどんなことを考えていましたか?
小学校時代から人魚の絵を描くことが好きだったので、絵本作家になることを考えました。自分が人魚になることが叶わないなら、物語を作ってその中で人魚を動かしたいと思ったんですよね。それからはお話を作る力をつけることを考えるようになって、中学3年生のときにはお別れ会でやる劇の脚本作りにチャレンジしました。でもしばらくしたらまた、自分が人魚になる道を考えるようになったんですけどね。
――どうしてですか?
『スプラッシュ』という映画を見たからなんです。この作品では女優のダリル・ハンナさんが人魚を演じているのですが、その姿が本物にしか見えなかったんですよね。それで「やっぱり人魚になりたい!」と再熱して。
さらに高校の頃に、素潜りダイバーであるジャック・マイヨールさんが出演された映画『グラン・ブルー』も見て、ますます人魚になりたい気持ちが高まっていきました。高まりすぎて「ジャック・マイヨールさんに会いに行こう!」と決断したくらいです。
――えっどういうことですか?
ジャック・マイヨールさんは長い時間潜っていられることで有名なダイバーさんで、しかもイルカとのコミュニケーション能力に長けた人だったんですね。水の中に長くいてイルカと戯れるなんて、もう人魚そのものだと思って。だから会いたかったんです。会って、一緒に潜って泳ぎたかった。そうすることで私も人魚に近づけるような気がしたんです。
でもそれは叶いませんでした。ジャック・マイヨールさんの本を出している出版社に電話で問い合わせたのですが、「メキシコに住んでいらっしゃいますよ」としか教えてもらえなくて。もちろん住所や連絡先は個人情報なので教えてもらえないのは当たり前ですが、もうちょっと、「どうしても会いたいんです!どうしたらいいですか!」と食い下がったらよかったです。
――いやいや、出版社に問い合わせたこともすごいと思います。
実はだいぶ後になって、私が会いたいと切望していた頃、彼は近所に遊びに来ていたということが判明したんです! だから粘ればよかったと後悔しているんですよね。
でも彼の存在を知ったおかげで、人魚になるにはまずダイビングを始めるといいということに気がつきました。それで高校卒業後にスキューバダイビングを始めました。
――その後はダイバーに?
いえ、ライセンスを取得してダイブマスターというプロョナルダイバーにもなりましたが、その後は演技の世界に入りました。自分が見てきた映画のように、映画の世界でなら人魚になる夢により近づけるかもしれないと、アメリカのハリウッドへと渡りました。
――すごい方向転換ですね…!
もともと私の父が俳優をやっていて、昔から演技に興味はあったんです。でも父と比べられるかもしれないと長らく遠ざけていて。それが、英語で演劇をする団体を見つけたことによってやってみる気になったんです。日本語でないなら父を意識しないでできると。実際にやってみたら思った以上に楽しくて、海外へ行きたい気持ちが芽生えてきました。
ハリウッドにしたのはたまたま知人が行く予定だったからなんですが、ハリウッドなら人魚という特殊な衣装やメイク、また演出を生み出す技術に長けているだろうと思ったのもありました。
――渡米してからはどんな生活を送っていたのですか?
まず学校へ通って、演技や歌、映画製作についてみっちり学びました。その後、エンターテイメント活動ができるビザを取得し、女優やモデルとして働きました。オーディションを受けて映画にも出たんですよ。チャン・ツィイーさん主演の『SAYURI』やキャメロン・ディアスさん主演の『イン・ハー・シューズ』にエキストラや端役として、出演しています。
――「プロマーメイド」のことはハリウッドで活動する中で知ったのでしょうか?
それがちがうんです。アメリカでの生活は5年経った頃、ビザの再取得ができなくて突然終了してしまいました…。
――なんと!
帰国してからは英会話の先生やクレジットカードの営業、手もみ等のリラクゼーションの仕事をしました。そのうち結婚して子どもができて、人魚とは縁遠い生活を送っていました。そんなときにテレビでたまたま、世界初のプロマーメイド・ハンナさんが紹介されていたのを観たんです。「こんな活動をしている人がいるんだ!」と衝撃でした。
――人魚になりたい気持ちがまたふつふつと湧いてきましたか?
そうですね。実はもう1つ気持ちに火を付けたきっかけがありました。それはハンナさんを知ってから1年後に、地元・名古屋の名古屋港水族館の水槽がリニューアルしたと知ったことです。
それも偶然テレビで観たことだったんですが、その特集を目にした瞬間、「ここで泳ぎたい!」と思ったんですよね。自分が人魚になったら泳ぐ舞台はここがいいと。きれいなサンゴ礁に囲まれて泳ぐ人魚の自分を思い浮かべて、プロマーメイドになる決心をしました。
――決心されてからはどんな行動を?
短期間でまたアメリカへ行って、フロリダにある人魚の尾ヒレを製作する会社「マーテイラー」を訪ねました。そこで社長さんに色と形を特殊にしたいとか、腹ビレを横じゃなくて前につけたいとか、いろいろとこだわりを伝えて尾ヒレをオーダーメイドで作ってもらうように話をつけてきたんです。
上は初めて作った布製の人魚のヒレ、現在は下のシリコン製を主に使用する(写真:本人提供)
――まず衣装を準備されたのですね。その次は何を?
泳ぎの練習ができる場所を確保するために、ダイビングプロショップーアルタバディマリンさんというところを訪ねました。そこはダイビング講習をされていて、お店に水深1.2m〜4mのプールがあるんです。しかも運営元である会社は水槽の潜水清掃など名古屋港水族館の一部業務を請け負っていました。
名古屋港水族館に何か繋がることができればと思いつつ、社長さんに直に、「これからプロマーメイドをやっていきたいんです!」と話しました。そしたら社長さんは「面白いね」と仰ってくださって、まだ実績もなかった私のスポンサーになってくださったんです!
――おおーっ、急展開ですね!
アルタさんのほうも、イルカショーに代わる企画として水族館に人魚ショーの提案をしたいと思っていたそうなんです。私にとっては本当にありがたいお申し出でした。まだお金を稼げていない状況だったのでプールを練習に貸していただけるのも助かりましたし、水族館でのパフォーマンスのことも一緒に考えてくださるとのことで心強かったです。
何よりも、アルタさんのおかげで私はやっと人魚になることができました! というのも、アルタさんは私のプロモーションビデオを撮ってくださったんです。
セイレーンさんプロモーションビデオ
何者かになること、とくにプロになることって、たいてい人から報酬をもらうことで認められるものですよね。でも私が「人魚になった」と思ったのはプロモーションを撮っていただいたときでした。当時日本には人魚の活動をしている人がほとんどいなかったので、お金をもらってからがプロというより、プロとして行動し始めてからがプロだと思ったんです。
――プロ意識を持ったことで人魚人生がスタートしたんですね。
その後は、改めてするべきことを確認して行動に移していきました。水族館でパフォーマンスするためには潜水士の資格が必要だったので取得し、それから水族館の水槽のことをよく知っておこうと思い、アルタさんにお願いして水槽掃除のアルバイトをさせてもらいました。
何事もやってみるもので、掃除体験ではまた新たな課題に気づくことができました。水の中ではものが大きく見えるのですが、そのせいで水槽の無機質なコンクリートの壁が怖く思えたんですよね。心臓がバクバクしました。そうした感覚も慣れておかないとショーはできないでしょうから、あらかじめ潜ることができてよかったです。
海岸で泳ぐ経験も積む
それからもう1つプロ意識から取り組んだことがありました。それはダイビング団体にかけあってマーメイドスイムの講習会を作ったことです。自分が日本でプロマーメイドを始めるということは、他の人が始めるきっかけを与えることにもなります。ですが両足が拘束されながらの泳ぎはやはり危険なものですから、きちんと泳ぎ方をレクチャーする機会を用意することが大事だと思いました。
今ではマーメイドスイムのプログラムを用意しているダイビング団体は多いのですが、当時はほとんどなくて、ダイビング講習で有名な団体も行なっていませんでした。そこで数少ない人魚仲間だったマーメイドももさんと、当時のビジネスパートナーとで、JCS(JAPAN CMAS 日本海中技術振興会)にお願いして一緒にプログラムを作らせてもらったんです。
――日本でプロマーメイドを始める責任を感じられたのですね。
もともとダイビングをやっていたのもあって、安全意識が強かったんです。それにせっかく人魚になれるのに、事故に遭ってほしくなくて。
――その後、水族館での人魚ショーは実現したのでしょうか?
残念ながら、名古屋港水族館さんでの人魚ショーは、水族館の方針とコロナもあって実現していません。でも知り合いのプロマーメイドの中には、現在、他の水族館で人魚ショーを開催している人もいますし、だんだんと水族館で人魚イベントをする機運が高まっていると思うんですよね。だから諦めないでいたいです。
それに私も他の水族館ではテストスイムができたんです。魚がいる水槽で泳げることはめったにないので貴重な経験でした。やってみると意外と魚とぶつかることが多くて、上手くパフォーマンスするためには避けないといけないということを学びました(笑)。
某水族館でのテストスイム
――少しずついろんなことを試して、やりたいことに近づいているんですね。
思えば私はずっとそういう歩み方をしてきているんですよね。人魚になりたい、なるにはどうしたらいいだろう、ダイビングを始めたら近づけるかもしれないからやってみよう、演技の世界に入ったら叶うかもしれないからやってみようって。
水族館でパフォーマンスしたいという夢ができてからも、ダイビングショップさんにコンタクトを取ってみよう、水槽を掃除して泳ぐ感覚をつかんでみよう、ととにかく手当たり次第やってきました。諦めがわるい性格だからかもしれませんが(笑)。
少なくとも私は何でも調べて、「こっちはどうだろう?あっちはどうだろう?」と試してきたのはよかったと思っています。その積み重ねがあったから「人魚になりたい」という、ともすれば空想で終わってしまいそうな夢を、現実に叶えることができました。
――セイレーンさんの歩みをうかがうと、何でもムリかもしれないとためらわずにやってみるといいのだと思えてきます。
行動を起こすのはハードルが高いように感じるかもしれませんが、意外と「なんとなく」の気持ちでいいと思います。私自身、「なんとなくこれをやるといい気がする」で進んできました。これからもふとした感情を大事にしていきたいですね。
そうそう、私、娘から「ママは今、284歳」って言われているんです(笑)。それは人魚の寿命が300年や1000年と言われていることにちなんでいるのですが、その伝説からすれば私が人魚として成熟するのはまだまだこれから(笑)。引き続き自分の心にしたがってチャレンジを続けていきたいと思います。
――今後のご活躍も楽しみにしています!本日はありがとうございました!
現在、セイレーンさんは愛知県知多市にあるDiveConciergeSAGAWAに所属し、マーメイドインストラクター、またマーメイドプロジェクトの代表として活動しています。
セイレーンさんが提供するプログラム:
【陸上】エンターテイメントヒプノセラピー(人魚の夢体験)、ヒプノセラピー、人魚コスプレ体験
【水中】人魚体験、人魚講習、水中モデル、人魚ショー、マーメイドコーディネーター、水泳講習、スノーケリング講習
■お問い合わせ先
Mail:promermaidseiren@gmail.com
TEL:0569-44-0626(※DiveConciergeSAGAWAの番号です)
公式LINE:https://lin.ee/nawfHHz
公式HP:Mermad Seirenマーメイドセイレーン
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この記事を編集した人
ほんのまともみ
やる気ラボライター。様々な活躍をする人の「物語」や哲学を書き起こすことにやりがいを感じながら励みます。JPIC読書アドバイザー27期。