子育て・教育

【3分解説】誰のために、やる気になる?|保護者にオススメ! 子どものやる気の引き出し方(6)【完結】

2019.06.25

【幼児】【小学生】【中学生】【高校生】【保護者】
・「誰かのために」という理由でやる気になることは多いのでは。
・コミュニケーションの積み重ねが、子どもの「家族のために」というやる気につながるはず。

【連載】保護者にオススメ! 子どもの「やる気」の引き出し方
第1回 どんな「やる気」を育てたい?
第2回 自分で決めると「やる気」が出る?
第3回 「やる気」の活かし方を知っている?
第4回 「やる気」はうつる?
第5回 「わからない」がわかると「やる気」になる?
第6回 誰のために「やる気」になる?



<第6回> 誰のために「やる気」になる?

 この記事を読んでくださっているみなさんは、いつもがんばっていますよね。家事や仕事など、何をがんばるかはさまざまだと思いますが、何とかやる気を出して毎日がんばっているのではないかと思います。

 「そうだなあ、私、毎日がんばっているよな」と思われたところで、少し考えてみましょう。なぜ、いろんなことをがんばっているのでしょうか?

 「なぜって言われても…」となるかもしれませんが、普段がんばっているいろんなことに思いを巡らしてみましょう。すると、「好きだから」「やりがいがあるから」といったことが浮かんでくるかもしれません。でも、実は「誰かのために」というのが出てくることが多いのではないでしょうか。

 この連載の第1回のときに、やる気の種類のお話をしました。興味や好奇心からがんばる「内発的動機づけ」と、報酬を目的としてがんばる「外発的動機づけ」がありましたね。「好きだから」「やりがいがあるから」というのは、まさしく内発的動機づけです。お子さんに対しても、勉強に対して少しでも内発的動機づけのようなやる気をもってくれればいいなと思われた方が多かったのではないかと思います。

 では、「誰かのために」というやる気はどうでしょうか? 内発的動機づけとは少し違いそうですね。ですが、「誰かのために」もやる気を支える大事な気持ちです。

 第2回のときに、「自己決定」のお話をしましたね。やるべき課題を人から決められるよりも、自分で決めた方がやる気が出るというお話でした。

 一方で、日本では、誰かのためにがんばることをよしとする文化があります。特に、「家族の期待に応える」とか「家族を喜ばせたい」といった、「家族のために」という気もちはときとして強いモチベーションになります。実際、ある実験で、子どもに「お母さんがこの課題をやってほしいと言っていた」と伝えると、自分で課題を選んだ場合と同じかそれ以上に一生懸命取り組んだという結果が報告されています。

 果たして、どんなときに子どもは「家族のために」と思ってやる気を出すのでしょうか? これは私個人の考えなのですが、家族とのあいだで勉強に関するコミュニケーションを積み上げてきた場合ではないかと思っています。

 勉強に関するコミュニケーションと言っても、もちろん「勉強しなさい」と口うるさく言うことではありません。もう少し子どもの中に自然に積み重なっていくような経験です。

 たとえば、第4回でやる気がうつるというお話をしました。その際、周りの人が色々な物事に興味を示しているのが大事だということをお話しました。何かのニュースを楽しそうに話しているお父さんの様子や、あれこれと家族で自由に話し合った経験は、子どもにとって印象的なものです。

 また、第3回の学習方略のところでお話したように、お母さんと一緒に勉強の仕方を考えてみた経験も印象深いものかもしれません。

 あるいは、第5回でお話したように、わからなかったところを家族で話しているうちに、なんとなく自分の苦手なところに気づいたというような経験も、子どもの記憶の中に残っていくでしょう。

 このような日常のちょっとしたコミュニケーションが、子どもの中には積み重なっていきます。そういった積み重ねのなかで、少しずつ「家族のために」というやる気が生まれてくるのではないかと思います。

 「簡単に言うけど…」と思われた方が多いかもしれませんね。勉強に関するちょっとしたコミュニケーションと言っても、なかなか難しいものだと思います。私自身、2人の子どもがいますが(まだ小学校入学前ですが)、毎日のかかわり方は試行錯誤です。試行錯誤ではありますが、自分の子どもたちが将来ふと立ち止まったとき、「お父さんのために」がほんの少し支えになるように、毎日かかわっていきたいなと思っています。

【連載】保護者にオススメ! 子どもの「やる気」の引き出し方
第1回 どんな「やる気」を育てたい?
第2回 自分で決めると「やる気」が出る?
第3回 「やる気」の活かし方を知っている?
第4回 「やる気」はうつる?
第5回 「わからない」がわかると「やる気」になる?
第6回 誰のために「やる気」になる?



この記事を書いた人

岡田 涼

香川大学教育学部 准教授。2008年、名古屋大学大学院教育発達科学研究科修了。11年、香川大学教育学部講師就任。13年、香川大学教育学部准教授、香川大学大学院教育学研究科准教授就任。現職。友人関係場面における自律的動機づけの役割や、学習場面における自律的動機づけなどを主な研究テーマとしている。

 
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