子育て・教育

アシュリー「自分という存在」に揺るぎない自信を【やる気が出てくる世界の言葉】

2019.11.28

親子で学びたい。我が子に伝えたい。そんな気持ちになれる、やる気が出てくる世界の言葉。歴史上の偉人や名著からピックアップ。その言葉はどうして出てきたのか、お伝えしていきます。
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自分の外見や能力、その他もろもろの特徴などを総して「スペック」と言うネット用語を目にしたことはありますか?

時には、自分や他人の顔つきや学歴、職業などを評価して、高学歴で人気のある職業に就いている、おまけに外見もいい人を「スペック高い」、その逆を「スペック低い」などと言ったりもするそう。

なかなか面白いけれど、冗談で言うのは別として自分のことを「スペック低い」なんて卑下する人間にはなりたくないし、お子さんにもそうはなって欲しくないですよね。

そもそも顔や学歴で人間の価値は決まりません。「スペック」なんて関係なく、「自分は自分。自分は素晴らしい人間なんだ」と胸を張れる大人になって欲しいです。

自分をまるごと愛し、人にも愛を与えよう。そんなやる気にさせてくれる、一冊の本と名言を紹介します。

やる気が出てくる世界の言葉】:「私は、私という人間であることが幸せ」〜I’m happy to be who I am.〜 

「アシュリー 〜All About Ashley〜」/アシュリー・ヘギ 著

テレビのドキュメンタリー番組で、初めて彼女の姿を見たときは衝撃的でした。髪はなく、血管の浮き出た頭皮に窪んだ目。痩せた小さな体躯は子どものようなのに、顔には沢山の皺が刻まれていました。


彼女の名前はアシュリー・ヘギ。早期老化症(プロジェリア)という難病を持つ少女です。1991年にカナダで生まれ、執筆当時は14歳でした。

プロジェリアは、正式にはハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群という病気で、主な症状としては健常者のおよそ10倍もの速度で老化が進むというものがあります。

他にも老化に伴う動脈硬化や白内障、骨粗鬆症など様々な症状が発症するそうです。アシュリーは、多感な思春期の少女でありながら、老いていく自分と向き合っていたのです。

この本は、アシュリーが14歳の時に自分について語ったもので、家族、友人、学校や今後の夢、そして命についての自分の考えが率直な言葉で綴られています。アシュリーは家族の愛情に包まれ、幸せな生活を送っていました。

病気について、幼い頃からからかわれてきたアシュリー。そのことについて彼女は、「彼らはプロジェリアのことを知らないだけ。教えてあげてもからかってくるなら、それは自分ではなく、彼ら自身の問題」だと言います。

病気であることを不幸に思ったことはないというアシュリーは、「人に怒らずにいられる」自分、「面白くてハッピー」な自分、「動物を愛し、その世話が上手」な自分を心から愛しています。

そんな彼女ですが、決して順風満帆な人生を送ってきた訳ではありません。彼女の母、ロリーは17歳という若さでアシュリーを出産し、シングルマザーとしてアシュリーを育ててきました。

アシュリーの父は彼女が1歳の時に家を出てしまい、ロリーは治療法のない病気を抱えた娘と二人で生きていかなければならなかったのです。自分より先に死んでしまう娘。その現実が受け入れれらず苦しむ母の姿は、きっとアシュリーにとっても辛いものだったでしょう。

しかし、ロリーは信仰によって心の救いを得、彼女と共にする時間を大切にしようと思って生きてきました。そんな母の再婚により、弟が生まれ、血は繋がっていませんが理解のある父ができ、アシュリーは4人家族となりました。

そんな幸せも、彼女が前向きに生きていくための基盤であったように思えます。

アシュリーには、ジョンというボーイフレンドもいました。カナダに住むアシュリーと、アメリカ在住のジョンは遠く離れていましたが、同じ病気を抱えるふたりは、小さな頃からの友達で、言葉がなくても分かり合えるような、そんな存在でした。

アシュリーより3歳年上のジョンは、アシュリーに沢山の影響を与えました。言葉でアシュリーを諭すというよりも、「自分の病気をふくめ、今ある状況を嘆くのではなく、少しでも前に進んで人生を楽しく、意味あるものにする」ということを、身をもって示してくれる存在でした。

アシュリーは、そんな彼を心から尊敬し愛していました。しかし、ジョンは16歳という若さでこの世を去ります。アシュリーは心から悲しみますが、生前から遠く離れて暮らしていたふたりは、滅多に会えなくても心は繋がっている感覚を共有していました。

アシュリーは、ジョンが天国にいてもそれは同じなのだということに気がつき、彼の死を乗り越えることができたのでした。

自分自身も死と向き合いながら、アシュリーは懸命に命のあり方について考えていたのでしょう。その心の深さは、自分自身だけではなく他人に向けられる優しさの中に溢れていました。

2009年4月21日、アシュリーは亡くなります。プロジェリア患者の平均寿命である13歳をはるかに越えた17歳。18歳の誕生日を間近に控えていました。

彼女は生前から、自分の命をチャンスと捉えていました。彼女は本の中で、こう繰り返しています。「私はハッピーでありたい」と。

病気を抱えた自分が笑顔でいることで、沢山の人を勇気づけたいと願っていたのです。彼女の生き様は、日本のドキュメンタリー番組で取り上げられ、その死から10年が経った今でも、誰かの心を励まし続けています。

〜子どものやる気にどんな影響が?〜

アシュリーが抱える病気の苦しさは、想像を絶するものがあります。体の痛みだけではなく、同世代の子たちがスポーツや恋愛に夢中になる中、年老いた肉体で出来ないことばかりの人生に耐えなければなりません。

でも、アシュリーは違いました。自分と他の誰かを比べて、どうこう考えたりはしない。完璧な人間はこの世にいないのだから、というのです。

落ち込むことや、傷つくこともたくさんあるけれど、彼女は自分を責めたりしません。それは、自分を愛し、自分という存在に揺るぎない自信を持っているからだと思います。

彼女は、自分が病気を持って生まれてきたのには、必ず何か意味がある。自分の生き様を通して人々に勇気を与えるという使命を、神様から授かったのだと考えていました。

人生とは、何をどれだけ持っているかではないのです。この世に生まれ、自分自身を精一杯に生きる中で、何を見つけるか。

自分の欠点も受け入れ、自信を持って生きていこう。そんな気持ちにさせてくれる一冊です。

参考文献「みじかい命を抱きしめて」/ロリー・ヘギ 著

やる気が出てくる世界の言葉:
「私は、私という人間であることが幸せ」〜I’m happy to be who I am.〜  「アシュリー〜All About Ashley〜」/アシュリー・ヘギ 著

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この記事を書いた人

藤原 望(ふじはら のぞみ)

1993年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後は福祉施設に勤務するが、社会人5年目で一念発起し文章を扱う仕事を目指す。この世で好きなもののトップ3は本、映画、お酒。

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