新納一哉さん、ゲーム開発にかける想い「やりたい気持ちに、ウソをつきたくない」
2020.07.29
仕事・働き方
2019.06.18
右田 創業の段階で、妻とひとつ約束をしました。それは「やっていて面白くなくなったらやめる」こと。サバのおいしさを多くの人に知ってもらうため、お客さんに楽しんでもらうために、ありとあらゆる「面白いこと」をやってやろうと決めました。
町口 具体的には、どのようなことをされてきたのでしょう?
右田 最初は出前のみの営業でしたので、妻のアイデアでサバをモチーフにした「サバイク」でサバ料理を配達することからスタートしました。
町口 ふむふむ。
右田 それから、サバのオリジナルテーマソング「サバババーン」を作曲して配達の時に流してみたり…。
町口 ほうほう。
右田 サバをモチーフにしたキャラクター「サバ家族」(サバ太郎、サバ子さん、サバリーマンの3人家族)を作って…
町口 なるほどなるほど…。
右田 お店の営業開始を11時38分(いい・さば)にして、メニューの数を38個にして、メニューにもサバの逸品盛り合わせの「鯖手箱」を作って、店舗に「鯖神社」を用意して…
町口 それはそれ…は……。
右田 それから小学生向けに「サバ料理体験教室」もやっていて、「サバ博士」として僕がサバ寿司の作り方などを子どもたちに教えていて…。
町口 ……(絶句)。
右田 あと、最近はサバのプロデュース(ブランディング)にも取り組んでいて、地下海水を使い陸上養殖で虫が付かないよう大切に育てられた“箱入り娘”を連想させる「お嬢サバ」を鳥取県と共同開発。それに温泉地で知られる熱海市の網代湾で養殖加工したサバ「湯遊(ゆうゆう)サバ」などもこれから(2019年6月)“デビュー”させる予定で…。
町口 その発想力はどこから出てくるんですかっ……!?
右田 眉間にしわを寄せずにとにかく面白く考えることからですかね。はたから見るとふざけているのではと思われるかもしれないですけど、僕たちとしては、真剣にふざけているんです(笑)。これもお客さまに楽しんでもらいたいから。従業員にも「楽しく真面目にふざけろや」って、言っています。
だから、面白い発想が出てこなくなくなったら、もう僕はそろそろ潮時かなといつも思っているんですね。面白いことが湧き出てくる限りは、やり続けたいです。
町口 確かに、「サバ博士」として子どもたちに向き合う右田さんは、とりわけイキイキとした顔でサバの魅力をアピールしていますね。
右田 子どもたちはとても素直で正直だから、面白いとどんどん僕になついてくれるんですが、面白くないと面白くない顔をします。ときどき見抜かれているような気がして、襟を正すことがありますね(苦笑)。子どもたちには「面白い大人がいるな」「楽しそうに仕事をしているな」と思ってもらえるだけで、やっている意義があると思います。
将来、子どもたちがどんな大人になって、どんな仕事をしてみたいか。体験を通じて、少しでも感じてもらえたらうれしいですね。
町口 最後に、今後の目標を教えてください。
右田 目標は、サバを通じて自分たちのためだけではなく、世の中のために事業を展開していくことです。ビジネスをやっていく中で、どう人を巻き込んでいくか、その「巻き込み力」が重要だと思っています。だから、これまでも法人、個人含め複数の方々を巻き込み、アライアンスを組んで、プロジェクトを立ち上げてきました。
例えば、僕は一般社団法人日本さば文化協会を作り、3月8日を「サバの日」と制定して、サバをPRするイベントを毎年開いています。2月3日の節分のように、サバの日を経済効果380億円の国民的イベントに育て上げることが目標です。既に関西では、サバの日に合わせて大手コンビニ店にサバ商品を並べていただきました。そして来年(2020年)の3月8日には、東京の渋谷でイベントを開く予定です。
さらに、今後は、サバによる町おこしを試みたいと思っています。それは、サバが世の中を大きく変える、いわゆる水産イノベーションです。まずは、農業をしながら陸上で漁業をする「漁農」を提案していこうと考えています。例えば、空いている土地に穴を掘り、淡水魚と海水魚が同居できる好適環境水を入れて造った人工の養殖場でサバと別の魚を混ぜて養殖することを思い描いています。
陸上に養殖場ができれば、海のマイクロプラスティック問題への解決策となるかもしれません。2050年には世界の海が魚の総重量よりも人間が捨てたプラスティックの総重量の方が上回り、その有害物質であるプラスティックを魚が食べて私たちが食べられる魚が枯渇すると言われていますから。実現したいです。
こうして僕が大きな目標を持てたのも、大好きなサバのおかげです。サバ一筋で自分の仕事に誇りを持てるようになりました。これから未来のある子どもたちも、僕のようにやり抜く、やり続けることを一つでも見つけてもらえたらと思います。
町口 ありがとうございました。
【取材後記】
今回お話を伺って、すっかりサバ博士のファンになってしまった編集部は、取材後、早速SABAR銀座店にお伺いしました。
店内は、お客サバを楽しませる仕掛けがたくさん。メニューを見ているだけでも飽きません。「サバに一筋で、楽しくやる!」という熱い思いを随所に感じることができました。
みなさんもぜひお近くの店舗へ行ってみてはいかがでしょうか。
>>>SABAR 東京銀座店