【デザイナー大家・戸田江美さん】24歳のデザイナー、下町マンションの大家になる。祖母の家業×クリエイティブの化学反応で生まれた新しい「住まい」のあり方

都電が走る東京都荒川区の下町・東尾久(おぐ)。昭和の雰囲気が残るこの街に、ユニークな個性で注目を集めている2つのマンションがあります。1つは、“おっちゃん物件”と呼ばれるトダビューハイツ。もう1つは、屋上菜園があるロジハイツ。戸田江美さんは、デザイナーとして活躍しながら、この2つの物件の大家さんをしています。おばあちゃんから受け継いだ家業をクリエイティブに楽しみ、地元を盛り上げるさまざまな取り組みにする戸田さんに、大家という職業の魅力や多彩な活動に込めた想いについて伺いました。     戸田江美(とだ・えみ) 生まれも育ちも東京都荒川区。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業。面白法人カヤック退職後、フリーランスのWebデザイナー・イラストレーターとして活動。24歳で空室が増えた1978年築「トダビューハイツ」の大家業を祖母から受け継ぐ。2019年からは空き地の段階からコミュニティをつくる新築賃貸「想像建築」プロジェクトをスタート。2022年、31歳で同地に賃貸マンション「ロジハイツ」を新築。デザイナーと大家業を掛け合わせた「デザイナー大家」として注目を集め、住宅メディアなどで執筆活動も行う。 Twitter:戸田江美 / デザイナー大家Lit.Link:戸田江美 デザイナー大家@荒川区トダビューハイツHP:https://todaviewheights.comロジハイツHP:https://souzou-kenchiku.com Follow @530E       目次〈タップして表示〉 部屋だけじゃなく、街全体も好きになってほしい 足元にある宝を見つけ、「築40年のおっちゃん物件」と命名 未来の住人と出会う「想像建築」プロジェクト 「私がおばあちゃんになっても楽しい街」を目指して    部屋だけじゃなく、街全体も好きになってほしい      ――戸田さんは、2つのマンションの大家さんとして、住人の方々と街歩きをしたり、落語会をしたり、屋上に菜園をつくって地域の憩いの場にしたりしていますよね。とても楽しそうで住みたくなります(笑)。           嬉しいです。私は祖母から引き継いだ築40年以上の「トダビューハイツ」と2022年に新しく建てた「ロジハイツ」という2軒の賃貸マンションを運営しているのですが、どちらも荒川区の下町にあって、街全体の雰囲気が昭和っぽいんですよ(笑)。      なので、入居者さんには部屋だけじゃなく、街全体も好きになってもらえたらなと思って、ご近所を一緒に回ったり、おすすめスポットを紹介したりしています。           落語は、私が柳家喬太郎師匠の大ファンで、Twitterに落語が好きだと書いていたら、落語家さんが入居してくれまして。「戸田さん落語好きなんだよね」といって、落語会をやってくれました。           屋上菜園は、「ロジハイツ」を建てるときに、ご近所友達が増える場所があったらいいなと思って、野菜づくりに熱中しても、人と喋っても、どっちでもいい空間になるかなと思ってつくりました。      ――大家業を始める前は、IT企業で働いていたそうですね。       面白法人カヤックという会社で、デザイナーをしていて、アプリやゲームのUIデザインをつくったりしていました。大家業を継いだ今もWEBデザインの仕事はフリーランスで続けているので、デザイナーと大家を掛け合わせて「デザイナー大家」と名乗っています(笑)。     ――仕事や生活は、どんなかんじなのでしょうか?      WEBデザインは、お客様からご依頼いただいた会社のサイトとかショッピングサイトを作ったりしていて、わりと毎日、地道にデザインして、コーディングしてっていうかんじですね。      大家業のほうも、入退去の書類をつくったり、収支計画を立てて金銭面の管理をしたり、SNSで住人さん集めをしたり、住人さんやご近所さんたちと一緒にイベントを企画したりと、日々やることがあります。        うちのマンションは管理会社を入れていないので、私のLINEに住人さんから「すいません、水道が出なくて」と直接メッセージが来て「今から行きます!」といって駆けつけて修繕したりもしています。               ――大家さんのお仕事は、もともと引き継ごうと考えていたのですか?      いえ、それは全然考えていませんでした。大学生のときに初めて祖母から「大家業を継ぐ気はあるかい?」と聞かれたのですが、そのときは「やりたくない」と答えたんですね。       当時の私は、美大に通っていて、おしゃれな街にある、かっこいいデザイン会社に勤めたかったので、祖母が大家業をしていたトダビューハイツは1978年に建てられた古いマンションでしたし、古民家みたいな味があるわけでもなかったので、単純に「ダサい」と思ってしまって(笑)。       会社に入ってからも、大家業のことはいっさい考えていなくて、将来はデザイナーとしてキャリアを積んでいくつもりでした。       ――それがどうして、24歳という若さで大家業を継ぐことに? … Continue reading 【デザイナー大家・戸田江美さん】24歳のデザイナー、下町マンションの大家になる。祖母の家業×クリエイティブの化学反応で生まれた新しい「住まい」のあり方