やる気の出るモノとコト

【教育】学問の本質は「問いを学ぶ」こと。高校生の主体的・対話的な活動が光る“探究ゼミ” ――千葉県立浦安高等学校

2019.04.9

【教育】【高校生】【保護者】
 高校生の興味・関心を引き出す“探究ゼミ”を実践している千葉県立浦安高等学校(千葉県浦安市、以下浦安高校)。参加生徒たちはゼミナール形式の授業を通し、大学教授等の指導を受けながら、夢中になって探究できる「問い」をつくっていきます。進化する学校教育の「いま」を追って、同校の校長・若菜 秀彦先生にお話をうかがいます。

 
 

“問い”から始まる、主体的な学び。

千葉県立浦安高等学校 外観

 浦安高校の1年生を対象とする“探究ゼミ~プロジェクトスタディ~”は、昨年度(2018年度)に始まったばかりのゼミナール形式の取り組みです。教科書を使用しない、教えこまない、生徒たちの活動を促す学びのスタイル――いわゆる「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の実践と言えます。

 探究ゼミでは、大学教員や専門家などの協力を得て、10のゼミを開講します。特徴的なのは、1年間にわたる長期的な活動であるという点です。高大連携として、これほどの規模・期間でのゼミナールを行うのはかなり珍しいケースと言えます。参加生徒たちは数人ごとの小グループを作り、おのおのの興味・関心に応じたテーマを策定。じっくりと時間をかけて探究を行い、それぞれの考えをまとめていき、最終的にはプレゼンテーションに臨みます。

 
千葉県立浦安高等学校
校長
若菜 秀彦 先生

 浦安高校校長・若菜秀彦先生は 「いま、子どもたちに求められているのは“問い”をつくる経験だと思っています。即ち、疑問に思うことを見つけ、興味を抱くという経験です」と力説します。

 発言の背景にあるのは、現状の学校教育への問題認識です。若菜校長が同校に赴任した当初、浦安高校では生徒の学習意欲の向上を課題にしていました。苦手意識が先に立ってしまう生徒が少なくなかったのだそうです。

 

 「授業改善や放課後補習などの学習支援も行ったのですが、ただ教わるというだけでは、生徒たちはその先に何があるのかなかなかイメージできない。そのため、学習意欲がなかなか高まらなかったのです。

 そこで、まず、生徒自身が興味・関心を持つことについての“問い”を出発点として、その“答え”を調べることをモチベーションとし、必要な知識を学んでいく――という流れが望ましいと考えました。こうした主体的な学びを生み出すための仕組みが、探究ゼミなのです」

 
 

“問い”をつくるための働きかけ。

ガイダンスの様子。ゼミを担当する
大学教授などが本気のレクチャー

 探究ゼミのプログラムで注目したいのは、“問い”をつくるためのさまざまな仕掛けが用意されているという点です。

 例えば、第1回目に行われた「オープニングガイダンス」では大学教員や専門家が担当ゼミごとにブースを用意。生徒たちは第4希望まで講師の説明を直接聞き、参加するゼミをどれにするかを考えることができます。「商学」「経営学」「舞踊学」「日本文化」など、多彩な分野から選べるのも生徒たちにとっては嬉しいポイントです。

 ほかにも、探究するテーマを考えるためのワークショップに工夫が凝らされています。複数枚にわたるワークシートを通して、自分がこれまでどのようなものに興味を持ち、それに対してどんな疑問が浮かんでくるかを考えられるようになっています。

約9カ月間、グループで力を合わせて
自分たちで決めたテーマを追いかける

 「時間をかけて自分なりの“問い”を形づくるからこそ、その後の探究は充実したものとなります」と、若菜校長。「日常の授業ではふれられないような内容が、じっくりと時間をかけて分かるようになっていくのは、生徒たちにとっても充実感・達成感の大きい時間になったはずです」

 

 なお、各回の終わりには振り返りのワークシートを使っています。自己評価をしたり、指導を担当した大学教員などからフィードバックをもらうなどして、生徒が自分の情報活用能力や意思決定能力といったものを正しく客観的に把握できるようになっています。

取り組み方はゼミによってさまざま
時間をかけて“問い”をつくり“答え”を探究する
 
 

自分なりの考えを表現する。

9カ月間の成果を手に、壇上に立つ

 2019年1月に行われた学年発表会の場では、生徒たちのプレゼンはいずれも大学生顔負けのクオリティとなりました。

 生徒たちの投票によって最優秀賞に選ばれたのは「日本文化ゼミ」の「『俺妹』に描かれた千葉について考える」。これは、アニメーションに描かれている実在の場所(いわゆる“聖地”)を観光資源とする“アニメツーリズム”について考え、千葉の新たな魅力を探っていくというものです。複数のアニメ作品を比較して検証するなど、ていねいに科学的探究を重ねたうえでの優れた発表に仕上がりました。

 このほか、「放置自転車をどう考えるか」「2050年のコンビニエンスストア」といった経済・社会的なテーマや、「中高生のオリジナル準備体操」「好きな人はなぜかわいく見えるのか」といった若者の視点に近しいテーマなど、バラエティに富んだラインナップが目白押しでした。

研究成果がまとめられた小冊子
 
 

探究心が、学ぶ“やる気”に、灯を。

 発表会を終え、参加生徒たちからは「通常では知ることのできなかった視点を持てた」「互いに意見を出し合い、まとめることで考える力が身についた」「自分たちで考察したりして、楽しむだけでなく、より具体的に学ぶことができた」といったコメントが寄せられました。

教室外での探究もさかんに行った

  「探究ゼミを通して、生徒たちはより能動的に学習に取り組む姿勢を身につけるようになりました」と若菜校長は振り返っています。

 実際、そうして興味・関心が引き出された生徒を対象にすると、授業改善や放課後学習も効果を発揮するようです。浦安高校ではこれらにも力を入れています。2018年5月に始まった放課後学習「放課後英語スクール」では、個別指導塾スクールIEと連携し、英語の学び直しへの意欲を持つ生徒たちに「つまずき」克服のためのプログラムを提供。学習への意欲を見せ始めた生徒たちのやる気を、さらに大きなものとしています。

 
 

ICT環境の課題解決に向けて。

 2019年度、第2回の実施に向けて、同校では学校支援センター「浦高プライド」の協力のもと、探究ゼミの質をより高めるためのクラウドファンディングに挑戦します。

クラウドファンディング ・・・ インターネット上にプロジェクトの素案を提示し、不特定多数の人に資金提供を募る手法。十分な出資が為されてプロジェクトが成功に至った場合、出資者は成果物やサービスの優遇措置などのリターンを得られる。

 

 若菜校長は次のように意気込みを語っています。

 

 「今回資金を募る目的は、生徒たちが広範囲の情報収集を行うためのタブレット端末の購入です。

 現在は、何か調べたいことがあれば、インターネットで検索をかけて簡単に”答え”を知ることのできる時代です。しかもAIの台頭により、膨大なデータから“答え”を見つけるのはさらに容易になってきている。かつて優秀な人材といえば、内蔵した多くの知識・技能をもとに“答え”をはじき出す人材を意味していましたが、もはやそんな時代ではなくなってきています。

 しかし、インターネットやAIは“問い”をつくることはできません。だからこそ、探究ゼミの生徒たちには自分なりの疑問を見つけ、“問い”をつくり、そして探究していく経験をして欲しいのです。それは、インターネットやAIを使いこなす力にもつながると考えます。

 ただ、残念ながら本校にはICT機器が決定的に不足しているのが現実です。そこへのご支援をいただければと思い、このたびの取り組みに至りました」

生徒たちの興味・関心を引き出すべく
探究ゼミは発展を続けていく

 「学問の本質は、問いを学ぶことにあると考えています。生徒の学習に対する態度が、受動的に“教わる”ことから主体的に“学ぶ”ことへと変わっていくよう、これからも全力を尽くしていく気持ちです。みなさまに関心を持っていただければ、これほど嬉しいことはありません」

 

 クラウドファンディングの募集期間は4月1日10時から、5月13日23時まで。5,000円から支援が可能です。金額によりますが、主なリターンは冊子『2019年度 探究ゼミ』への支援者としての名前掲載や、学年発表会への招待状などとなります。

>>>「探究ゼミ」クラウドファンディングサイト

 

【取材を終えて】
 大学進学のユニバーサル化が進展するのに伴い、「なんのために大学で学ぶのか」目的意識が希薄な学生が増えた――という指摘がされるようになって、もはや久しいという印象があります。
 いまは「どこでもいいから進学する」ならば容易にできる大学全入時代です。だからこそ、「なにを学びたいのか」「なにを知りたいのか」といった“問い”の意味が、改めて考え直されているように思われます。そういった点が、学びへのやる気につながるのかもしれません。
 問いを学ぶ、探究ゼミの試みにこれからも目が離せません。

 

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